Margot による Π
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/09 18:19 UTC 版)
「軌道近くから他の天体を排除」の記事における「Margot による Π」の解説
天文学者の Jean-Luc Margot は、天体の質量、軌道長半径、主星の質量のみに基づいて分類分けを行うことの出来る判別式として、 Π {\displaystyle \Pi } (ギリシア文字のΠ) を提案した。スターンとレビソンの Λ {\displaystyle \Lambda } と同様に、 Π {\displaystyle \Pi } は天体が自身の軌道上を一掃する能力を示すものである。しかし Λ {\displaystyle \Lambda } と異なるのは、 Π {\displaystyle \Pi } は純粋に理論にのみ基づいており、太陽系の経験的なデータは使用していないという点である。また Soter の μ {\displaystyle \mu } を計算するためにはその天体が存在する軌道領域における正確な天体数の情報が必要だが、 Π {\displaystyle \Pi } は太陽系外の天体に対しても決定可能な要素に基づいている。Margot は、ある惑星候補天体がその軌道領域から他の天体を排除するために必要な質量を、以下のように導出した。 M p M ⊕ ≳ 1.9 × 10 − 4 C 3 / 2 ( M ∗ M ⊙ ) 5 / 2 ( a 1 a u ) 9 / 8 . {\displaystyle {\frac {M_{p}}{M_{\oplus }}}\gtrsim 1.9\times 10^{-4}C^{3/2}\left({\frac {M_{*}}{M_{\odot }}}\right)^{5/2}\left({\frac {a}{1\,{\rm {au}}}}\right)^{9/8}.} ここで M p {\displaystyle M_{p}} は惑星候補天体の質量、 M ⊕ {\displaystyle M_{\oplus }} は地球質量、 M ∗ {\displaystyle M_{*}} は主星の質量、 M ⊙ {\displaystyle M_{\odot }} は太陽質量、 a {\displaystyle a} は天体の軌道長半径である。また C {\displaystyle C} はその天体が軌道上の他の天体を排除している領域の広さを示す量であり、天体のヒル半径の何倍かで決まる無次元量である。なおこの式では主星の主系列段階の寿命は100億年であることが仮定されている。その上で、Margot は Π {\displaystyle \Pi } を Π = M b o d y M c l e a r {\displaystyle \Pi ={\frac {M_{\rm {body}}}{M_{\rm {clear}}}}} と定義した。 M c l e a r {\displaystyle M_{\rm {clear}}} は天体がその軌道領域から他の天体を排除するために必要な質量で、1番目の式の右辺に相当する。 M b o d y {\displaystyle M_{\rm {body}}} は惑星候補天体の質量を地球質量を単位として表したものである。この判別式において、天体の Π {\displaystyle \Pi } が1を超えているものが惑星であるとした。また C {\displaystyle C} の値としては 2 3 {\displaystyle 2{\sqrt {3}}} 、つまり他の天体を排除している領域の広がりは最低限その天体のヒル半径の 2 3 {\displaystyle 2{\sqrt {3}}} 倍が必要であるとしている。これは、惑星は "feeding zone" と呼ばれる一定の範囲内の固体物質を惑星に降着しているはずという要請に基づくものである。 Π {\displaystyle \Pi } は、ある候補天体が近傍の軌道にある小さな天体に十分なエネルギーを与え、一定の軌道範囲から小天体を排除するために必要な周回数の計算に基づく指標である。一方で Λ {\displaystyle \Lambda } は小惑星帯における小惑星が排除されるのに必要な平均的な時間を用いており、太陽系内のその領域のバイアスが掛かっているという点で異なるものである。 なお、ここで定義されている Π {\displaystyle \Pi } は惑星が円軌道にあることを仮定している。軌道領域から他の天体を排除する時間スケールが惑星の軌道離心率にどう依存するかについては追求されておらず、Margot の論文では将来的な課題であると述べられている。ただし惑星が近傍の他の天体の軌道を重力によって変化させることに関しては離心率によらないため、離心率によらず判別式は適用可能だろうとの見解を述べている。
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