CEとCLR。ヘルム。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 10:06 UTC 版)
「セーリング」の記事における「CEとCLR。ヘルム。」の解説
なおセーリング時は、セールのCE(center of effort)と艇体のCLR(center of lateral resistance)の位置関係も考慮しなければならない。CEがCLRより後ろにあれば、風上に向かおうとする性質(ウエザー・ヘルム weather hellm)が生じ、CEが前にあれば、風下に向かおうとする性質(リー・ヘルム lee helm)が生じてしまう。またオーバー・ヒール(over heel)によってもウエザー・ヘルムは生じる。 一般のセイリング時 CEとCLRがぴったり垂直関係(ぴったり上下)にあれば、風上に向かおうとする性質も風上に向かおうとする性質も持たず、理論上は「理想的」ではあるが、実際のセーリングの時にCEとCLRがぴったりと上下になることはまず無い。つまり、ラダーを正確に真っすぐに保つと、針路がわずかづつ風上へとズレていったり、風下へとズレていったりする。よって通常、セーリングをしている最中は、ヘルムという性質を打ち消すようにわずかにラダー(舵)を切る(当て舵)。ラダーを当てた分は、抗力(drag 抵抗)となる。その程度はラダーを切る角度による。わずかな角度であれば抗力はほとんど無い。大きな角度では抗力が大きくなる。 (通常、セーリングをしている時のほとんどの時間、ほとんどのセイラーは、ヘルムを打ち消すために、多かれ少なかれ、いくらか「舵を当てた」状態にしている。通常の実用のセーリングの時(たとえば、欧米のセイラーが家族・友人とセイリングをレジャーとして楽しんでいる時や、たとえばアフリカやアラブの三角帆の漁船が近くの漁場に向かう時など)はこうしたセイリングのしかたで十分である。通常、CEとCLの微妙な位置のズレは常にある。几帳面に調整するとなると「セイルの面積をいじってCEを調整→ラダーのところに戻る→ラダーの当て具合の確認→ズレが少し残っていることに気付く→またセイルのところへ移動し、前後のバランスをいじる→...」といった作業を行ったり繰り返したりせざるを得なくなり、セイル面積をあれこれ修正している最中は、(「安全航行」をする上で重要な)自船の周囲の海面・海域をしっかりウォッチすることがおろそかになり、他の船舶との衝突などの事故が起きがちであるし、通常の航行では「安全航行」が一番大切なので、(CEとCLRの微妙なズレの問題は、相対的に優先順序が低いので)舵を当てることで解決し、航行を続行する。 ただし、これも程度(量)の問題ではあるので、もしもCEとCLRの間に極端なズレがありあまりにヘルムが極端に大きすぎて、「ラダーの抵抗が原因で、極端に効率が落ちすぎていて(実用上も)困る。」などと判断される場合は、ジブセイルかメインセイルのどちらかの面積を変更して(つまり、前後のセイルの面積バランスを調整して)CEの前後位置を修正する。 競技セイリング時 競技セイリングの時は、話が異なり、ものごとの優先順序が変わり、「安全運航」よりもしばしば「(危険を冒しても、事故のリスクを負ってでも)少しでも上位でゴールする」の優先順位が上がりがちなので、ヒール角度、操船技術、チューニング等を駆使して「ノー・ヘルムを目指す」ことになる。ヘルムの微調整は競技セイラーにとっては「腕のみせどころ」のひとつである。(ただし、競技参加者はしばしば「自分が上位になること」で頭が一杯になってしまうが、本当は競技の最中でも人命が最重要であり、たとえ調整するとしても「安全航行」の妨げにならない程度にしたほうがよい。(たとえ競技でも)水上、海上は常に危険がある。競技セイリング中に艇と艇が衝突して、その衝撃で乗組員が気絶し落水、水死する事故が起きたこともある。)
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