AHCCとスペースフライト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:17 UTC 版)
「AHCC」の記事における「AHCCとスペースフライト」の解説
スペースフライトが免疫力に及ぼす影響を研究している米国Morehouse医科大学G.Sonnenfeldらは、AHCCをフライトモデルマウスに投与すると、それらの免疫力の向上と細菌感染に対する死亡率が低下することを報告し、機能性食品の宇宙食としてのAHCCの有用性を示している。実験は、まず感染の10日前からマウスにAHCCを投与し、その後、後肢を吊るし、スペースフライトと同様の負荷を与え、その間もAHCCを投与し続けた。懸垂状態にしてから2日目にLD50相当量の肺炎桿菌を感染させ、2週間免疫パラメータと感染症の状態について観察した。その結果、生存期間延長、NO産生増加、TNF-α・IL-1β産生が有意に向上し、AHCCは免疫低下・感染症への抵抗力低下が改善されることが示唆された。そして、宇宙で実施できる臨床試験は限られており、このような動物実験の後肢懸垂モデルは、宇宙における無重力に近い状態を再現することができ、生理学的に大変有用であると報告している。 さらにG.Sonnenfeldらは、脚部傷害感染モデルにおいて、AHCCは細菌感染に対して保護効果があることを報告している。その実験は、モデルマウスを用いて、感染前8日間AHCCを強制経口投与した。感染24時間前からマウスを絶食させ、さらに感染後6時間まで継続し、LD50相当量の肺炎桿菌を大腿部の筋肉内に感染させ、AHCC投与群とコントロール群で生存率を比較した。その結果、AHCCを前投与したマウスの生存率が大幅に延長され、サイトカインやリンパ球が増加し、免疫システムの全体的な活性化を誘導し、絶食を含む外科的感染症モデルにおいて、対応策として使用できることが明らかになった。 また、独立行政法人 医薬基盤研究所の難病・疾患資源研究部疾患モデル小動物研究室プロジェクト(代表:野村大成)では、宇宙放射線を含む宇宙環境の人体影響評価と防護に関する研究の中でAHCCによる放射線防護効果の可能性を示している。すなわち、2%のAHCC水溶液を経口摂取させたマウスに放射性セシウム137のγ線を照射したところ、AHCCを摂取させていない対照群と比較して白血病や腫瘍、胎児奇形の発生率が有意に低下したことを「宇宙利用シンポジウム2011(主催:宇宙航空研究開発機構)」で報告した。 以上から、スペースフライト感染モデルや外科的感染モデル、放射線照射において、AHCCは生存率を上げ、死に至る時間を延長し、さらには致死量感染に対する抵抗性を誘導した。これは、早期の非特異的なバランスある免疫反応や細菌の効果的なクリアランスにつながる白血球の再分布を誘導することによることを示唆している。
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