592便に積載された酸素発生装置
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「バリュージェット航空592便墜落事故」の記事における「592便に積載された酸素発生装置」の解説
バリュージェット航空は1996年1月31日にアドリア航空で運用されていた2機のマクドネル・ダグラス MD-82を購入する契約をし、同年2月1日にはさらにトランスウェード航空(英語版)で運用されていた1機のMD-83を購入する契約を結んだ。購入後、これら3機の化学酸素発生装置(英語版)(以下、酸素発生装置)が12年の耐用年数を越えているかどうか、下請けの整備業者セイバーテック(SabreTech)によって検査された。セイバーテックとバリュージェット航空の間では、納期が遅れた場合一日につき2,500ドルを支払うという契約が結ばれていた。そのためセイバーテックは臨時の整備士も雇用し、70人以上で3機の整備を行っていた。検査から、2機のMD-82の酸素発生装置は大部分が耐用年数を越しているか、期限切れ間近のものであった。バリュージェット航空はセイバーテックに全ての酸素発生装置を交換するよう指示した。これらの酸素発生装置は期限が切れてはいたものの、中身は充填されたままであった。未使用の酸素発生装置は危険物に指定されていなかったが、化学物質を使用するタイプの酸素発生装置は危険物に指定されており、許可が無ければ輸送してはならなかった。しかし、バリュージェット航空にはその許可は無かった。期限切れの酸素発生装置は、作動させた上で熱が無くなってから輸送することを推奨されていた。なお、酸素発生装置は作動後でも装置内に化学物質が残留するため、有害廃棄物に指定されていた。酸素発生装置はピンを引くと雷管が叩かれ、内部で化学反応が起きる。作動すると容器の温度は摂氏260度(華氏500度)近くに達する。そのため、作動防止のため未使用の酸素発生装置の雷管には合成樹脂製の安全キャップをすることとなっていた。この事は、MD-80シリーズのマニュアルとバリュージェット航空のワークカードの酸素発生装置取り付け、及び取り外し手順の項に記載されていた。これらのコピーは事故当時、セイバーテックにも配布されていた。航空会社によっては、期限切れで未使用の酸素発生装置を取り外す際に作動させ、中身を排出することも手順に組み込まれていた。しかし、セイバーテックの施設にはこの安全キャップが無く、作業員たちは安全キャップを着けることも中身を排出することもしなかった。代わりに誤作動を防ぐためピンを切断、あるいは缶に巻き付けた状態にしてテープで固定するという対処をした。 1996年3月中旬、セイバーテックの作業員はMD-82から酸素発生装置を取り外した。取り外された約144個の酸素発生装置は、ほとんどが段ボールに入れられた状態で格納庫の棚に保管されていた。また、中身はポリエチレン製の気泡緩衝材で厳重にくるまれていた。このうち6個は段ボールに入れられておらず、その後の調査でセイバーテックの施設内から発見された。この時、セイバーテックの作業員は誤って緑色の「修理可能」のタグをつけた。事故の2日前、セイバーテックの在庫係は酸素発生装置が入った段ボール箱5箱とタイヤ3つを輸送する準備を行った。その際、誤って在庫係は「空(Empty)」のラベルを張るよう指示した。在庫係は整備士から箱の中身について詳細を伝えられていなかったため、中身を空の酸素ボンベと誤って解釈していた。事故当日、592便に段ボール箱を積み込んだ作業員は積載時に「カチン」という音がしたと証言した。事故現場での捜索により、28個の酸素発生装置が発見された。NTSBは酸素発生装置が離陸までの間のいずれかのタイミングで発火したと推定した。また、パイロットが最初に直面した電気系統の問題は、火災によりコードが焼き切れたためだとした。
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