35mm判の標準レンズの歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 19:51 UTC 版)
「標準レンズ」の記事における「35mm判の標準レンズの歴史」の解説
ダブルガウス型とゾナー型のそれぞれが誕生するまでの歴史は、ここでは割愛する。どちらもすぐれた構成であり、F2.0よりも明るい標準域のレンズとしては、この2者のどちらかとするのがセオリーとなった。発展当時には、それぞれに利点・欠点はあるが、レンジファインダーカメラ時代にはどちらの設計も多く見られ、中には両者を組み合わせた折衷案とも言えるような設計の写真レンズもあった。しかしライカ判一眼レフカメラのレンズとしては、ゾナーは後群がレフ機構のミラーと干渉することが問題となり、望遠にはゾナーやその類型も残ったものの、大口径標準レンズはダブルガウス型とする他はなかった。 日本の大手各社が一眼レフカメラへ本格的に移行し始めた時代の設計技術や硝材では、しかし、ダブルガウス型でも、ミラーと干渉しないバックフォーカスを確保して、かつ良好な光学性能を有する50mmの大口径レンズの設計は至難で、55mmや58mmといった仕様とするという選択がされた。特にF1.2の大口径レンズの多くは50mmより長い焦点距離のレンズが製造された。 その後、新種ガラスや非球面などの技術的・工学的進歩によるものもあるが、典型的な4群6枚のダブルガウス型に加える変形として、(1)最後端の凸レンズを2枚に分ける (2)前側の第2群を貼合せではなく分離する、という処方により、1970年代には安定して一眼レフカメラ用50mmF1.4が設計されるようになり、定番標準レンズとして2017年現在も製造販売されている。 2000年代には、それまで標準単焦点レンズに消極的だったレンズメーカーにも動きがあった。2006年にレンズメーカーのコシナは、1975年からコンタックス(CONTAX)用として販売されていたプラナー50mmF1.4を硝材の見直しなどによって改良されたものを発売した。2008年にレンズメーカーのシグマが非球面レンズを採用した「50mm F1.4 EX DG HSM」をPIEに参考出品し、その後5月末に正式発表、同年発売された。このレンズは実焦点距離も50mmであり、50mmF1.4としては幾分大型で重い。 2010年代にコシナから発売(「Carl Zeiss」ブランド)された ZEISS Otus 1.4/55 と ZEISS Milvus 1.4/50 は、標準域だが、対称型ではなくレトロフォーカスタイプ(Zeissブランドとしての呼称は「ディスタゴンタイプ」)を採用している。メーカーによれば、レトロフォーカスタイプの設計は、「最適化されたレイパスがミラーレスカメラにとっても理想的」、「長い焦点距離でも画像の隅々まで良質な修正を可能にし、フィールドの歪曲を最低限にとどめ」るもの、としている。
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