2024年の野球 において、メジャーリーグベースボール(MLB) のポストシーズン は10月1日に開幕した。アメリカンリーグ の第55回リーグチャンピオンシップシリーズ (英語 : 55th American League Championship Series 、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、14日から19日にかけて計5試合が開催された。その結果、ニューヨーク・ヤンキース (東地区 )がクリーブランド・ガーディアンズ (中地区 )を4勝1敗で下し、15年ぶり41回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出 を果たした。
ヒューストン・アストロズ (西地区 )が出場しないアメリカンリーグ優勝決定戦は2016年 以来8年ぶりで[ 3] 、ヤンキースも直近3度のリーグ優勝決定戦出場である2017年 ・2019年 ・2022年 はいずれもアストロズに敗れていた[ 4] 。ヤンキースは1921年 のリーグ初優勝以来16年以上優勝から遠ざかっていたことがなく、この年もし優勝を逃していれば球団ワースト記録を更新するところだったが、今シリーズを制したことによりタイ記録にとどめた[ 注 1] [ 5] 。その一方でガーディアンズはこの年もワールドシリーズ 優勝を逃し、継続中では最も長いシリーズ優勝逸期間が76年に伸びた[ 6] 。両球団がポストシーズンで対戦するのは2022年の地区シリーズ 以来2年ぶり7度目で、これは歴代2位タイの多さである[ 注 2] [ 7] 。シリーズMVP には、優勝を決めた第5戦の6回表に同点の2点本塁打 を放つなど、5試合で打率 .222・4本塁打・7打点 ・OPS 1.222を記録したヤンキースのジャンカルロ・スタントン が選出された。しかしヤンキースは、ワールドシリーズではナショナルリーグ 王者ロサンゼルス・ドジャース に1勝4敗で敗れ、15年ぶり28度目の優勝を逃した。
2021年 、MLB機構が非銀行 系住宅ローン 会社のローンデポ(英語版 ) と契約を締結し、同社はその年から5年間リーグ優勝決定戦の冠スポンサー となった[ 8] 。これにより、大会名はアメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ presented by ローンデポ (英語 : American League Championship Series presented by loanDepot )となる。また2024年 、MLB機構はドイツ の作業服 製造販売業者エンゲルベルト・シュトラウス(ドイツ語版 ) とスポンサー契約を締結した。これにより2027年までの契約期間中、選手は今シリーズを含むポストシーズン全試合で同社の広告ロゴ 入り打撃用ヘルメット を着用する[ 9] 。
両チームの2024年
10月10日にまずヤンキース(東地区 優勝)が、そして12日にはガーディアンズ(中地区 優勝)が、それぞれ地区シリーズ突破 を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
ヤンキースは2023年 を82勝80敗の地区4位で終え、1992年 以来の負け越しこそ免れたものの[ 10] 、ポストシーズン 進出を7年ぶりに逃した。打線が総得点でMLB25位と低迷したうえに構成も右打者に偏っていたことから、オフには左の強打者フアン・ソト をトレード で獲得した[ 11] 。2024年は、投手陣ではエース のゲリット・コール が右肘痛により、開幕から2か月半の欠場を強いられる[ 12] 。また打線も、ソトとアーロン・ジャッジ が座る2番・3番が強力な一方で、その前後の打順の弱さが目立った[ 13] 。それでもチームはボルチモア・オリオールズ と地区首位を争い、前半戦は58勝40敗で1.0ゲーム差 の2位につけた。7月30日のトレード期限までには、ジャズ・チザム・ジュニア を獲得し打線を強化する。移籍後のチザムは未経験の三塁守備に就きながら走攻守に活躍し、持ち前の明るい性格でチームに活気ももたらした[ 14] 。後半戦はオリオールズが33勝33敗と停滞したこともあり[ 15] 、そのオリオールズを抜いて首位に立つと、9月26日にはオリオールズとの直接対決に勝利して地区優勝を決めた[ 10] 。平均得点5.03はリーグ最高、防御率3.74はリーグ4位。シーズン序盤は先発ローテーション でルイス・ヒール やカルロス・ロドン がコール離脱の影響を軽減し、終盤に入ると救援投手陣 でルーク・ウィーバー の躍進がチームを助けた[ 16] 。ワイルドカードシリーズ はリーグ最高勝率のため出場を免除され、地区シリーズではカンザスシティ・ロイヤルズ を3勝1敗で下した[ 17] 。
ガーディアンズは、2022年 の地区優勝から一転して2023年は76勝86敗と負け越した。シーズン終了後、監督を11年務めたテリー・フランコーナ が健康不安もあって退任し、スティーブン・ボート が39歳の若さで後任となった[ 18] 。ただ選手補強では大きな動きがなく、貧弱な打線の改善には若手の成長が求められた[ 19] 。2024年は序盤で地区首位に立つとその後も好調を維持し、6月25日には勝率をMLB最高に上げる[ 20] 。前半戦終了時点でも58勝37敗で、2位ミネソタ・ツインズ には4.5ゲーム差をつけた。エースのシェーン・ビーバー が2登板のみで右肘を痛めてシーズンを終えたなか[ 21] 、躍進の原動力となったのは強力な救援投手陣と、打線でスティーブン・クワン やホセ・ラミレス らが好成績を残したことだった[ 20] 。後半戦はツインズが順位を下げ、代わってロイヤルズの追い上げを受ける。7月以降は打線の低迷にともない勝率を落とし、ロイヤルズとのゲーム差も6月25日時点で10.0あったのを徐々に縮められて、8月27日には75勝58敗で並ばれた[ 22] 。だがそこから逆転は許さずに再び差をつけ、9月21日に地区優勝を手にした[ 23] 。平均得点4.40はリーグ7位、防御率3.61はリーグ3位。救援投手陣はシーズンを通して好投し、70登板以上で防御率2.00未満の投手を抑え のエマヌエル・クラセ ら4人擁していた[ 24] 。ワイルドカードシリーズは地区優勝3球団中2番目の高勝率だったため出場を免除され、地区シリーズではデトロイト・タイガース を3勝2敗で下した[ 25] 。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ " は、地区優勝球団どうしやワイルドカード 球団どうしの対戦の場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、ヤンキースがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は6試合対戦し、ヤンキースが4勝2敗と勝ち越していた[ 26] 。
両チームの出場選手登録(ロースター) は以下の通り。
名前の横の★ はこの年のオールスターゲーム に選出された選手を、# はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
※ 第1戦終了後にカッブが故障のためロースターを外れ、第2戦からはライブリーが代わりに登録された。
※ 第3戦終了後にハミルトンが故障のためロースターを外れ、第4戦からはライターが代わりに登録された。
ヤンキースは地区シリーズ のロースターから内野手のベン・ライス と外野手のデューク・エリスを外し、内野手のアンソニー・リゾ と投手のマーカス・ストローマン を加えた。リゾはレギュラーシーズンでは一塁手として91試合に先発出場したが、9月28日の試合で右手に死球 を受けて薬指 と小指 を骨折 した。ヤンキースは腰痛 のDJ・ルメイユ に続いてリゾも欠いたため本職の一塁手が足りなくなり、地区シリーズではプロ14年目で一塁未経験のジョン・バーティ を先発起用していた[ 27] 。今シリーズへ向けては投手をひとりではなくふたり増やす案も検討されたが[ 28] 、ネスター・コーテズ は左肘 痛の回復ぶりが十分でなく、ストローマンのみが追加された[ 29] 。地区シリーズでは、ライスは出場機会がなく、エリスは代走 として1試合に出場したのみだった。
ガーディアンズも地区シリーズのロースターから投手をひとり増やし、野手のアンヘル・マルティネス に代えてペドロ・アビラ を登録した。ガーディアンズには今シリーズへ向けて、投手陣の層を厚くする必要があった。それはリーグ優勝決定戦が地区シリーズよりも試合数が多いためだけでなく、これまで救援投手陣に大きく負担をかける戦い方で勝ち抜いてきたためでもある[ 30] 。地区シリーズ5試合の消化イニング数は救援陣のほうが先発陣よりも多く、また5試合中4試合以上に登板した投手が4人もいた[ 31] 。ロースター入りの候補にはベン・ライブリー やニック・サンドリン もいたが、アビラは使い勝手の良さや安定感で彼らを上回って選ばれた[ 30] 。マルティネスは地区シリーズ第3戦で代打 として打席に立ったが遊ゴロで、それが唯一の出番だった。
開幕前の予想
MLB.comが所属記者・アナリスト45人にどちらがシリーズを制するか予想させたところ、ヤンキース勝利予想が33人に対しガーディアンズ勝利予想が12人という結果となった[ 32] 。他の媒体が実施した同様の企画でもヤンキース勝利予想が多数派で『ジ・アスレチック 』では記者数不明ながら全記者中の76.9%が[ 33] 、ESPN では13人中12人が[ 34] 、CBSスポーツ では6人中5人が[ 35] 、『ニューヨーク・ポスト 』では6人全員が[ 36] 、それぞれヤンキースを支持した。
試合結果
2024年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月14日に開幕し、途中に移動日を挟んで6日間で5試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付
試合
ビジター球団(先攻)
スコア
ホーム球団(後攻)
開催球場
10月14日(月)
第1戦
クリーブランド・ガーディアンズ
2-5
ニューヨーク・ヤンキース
ヤンキー・スタジアム
10月15日(火)
第2戦
クリーブランド・ガーディアンズ
3-6
ニューヨーク・ヤンキース
10月16日(水)
移動日
10月17日(木)
第3戦
ニューヨーク・ヤンキース
5-7x
クリーブランド・ガーディアンズ
プログレッシブ・フィールド
10月18日(金)
第4戦
ニューヨーク・ヤンキース
8 -6
クリーブランド・ガーディアンズ
10月19日(土)
第5戦
ニューヨーク・ヤンキース
5 -2
クリーブランド・ガーディアンズ
優勝:ニューヨーク・ヤンキース(4勝1敗 / 15年ぶり41度目)
第1戦 10月14日
第2戦 10月15日
第3戦 10月17日
第4戦 10月18日
第5戦 10月19日
脚注
注釈
出典
^ "Six umpires to make LCS on-field debuts, with Dan Iassogna and Bill Miller serving as crew chiefs ," Associated Press News , October 13, 2024. 2024年10月15日閲覧。
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外部リンク
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