1952年のロードレース世界選手権

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1952年のロードレース世界選手権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2021/07/30 09:53 UTC 版)

1952年の FIMロードレース世界選手権
前年:	1951	翌年:	1953

1952年のロードレース世界選手権

1952年のロードレース世界選手権は、FIMロードレース世界選手権の第4回大会である。5月にスイス・ブレムガルテンで開幕し、スペイン・モンジュイックで開催される最終戦まで全8戦で争われた。

シーズン概要

1952年シーズンから、これまで許可されていなかったドイツ人ライダーとドイツメーカーの参戦が可能になった。戦前のレースで活躍したBMWはワークス参戦を見合わせたが、DKWとNSUがこの年から参戦を開始した。

また、同時にこの年からドイツGPがカレンダーに加わり、40万人の観衆を集めた。但し、前年開催されたフランスGPがカレンダーから消えたため、前年同様に全8戦で争われた。

この年の第6戦アルスターGPの500ccクラスでは、18歳のジョン・サーティースがグランプリデビューを果たしている。

500ccクラス

前年に圧倒的な強さを誇ったノートンにとって、一転してこの年は受難のシーズンとなった。チャンピオンのジェフ・デュークとオーストラリアのケン・カバナに加え、新戦力としてデイブ・ベネットを新たにファクトリーチームに迎えたが、ベネットは開幕戦のスイスGPでトップ争いの最中のクラッシュによって命を落としてしまった。ベネットのマシンは当初はプライベーターとして参戦していたレイ・アムに与えられたが、アムはドイツGPの予選で負傷してしまう。そしてエースのデュークも選手権の合間に出場したノンタイトルのレースで足首骨折という重傷を負い、シーズン後半を棒に振ってしまった。

一方のジレラはシーズン中もパワーの強化を続け、シーズン終盤には55ps/10000rpmにまでパワーアップされていた。ウンベルト・マセッティはスイスGPはリタイヤに終わり、マン島にはジレラの伝統として出場しなかったが、オランダ、ベルギーと続けてデュークを降して勝利を収め、デュークが負傷欠場した後半戦では2度の2位表彰台を獲得して1950年に続く2度目のタイトルを獲得した。マセッティは最高峰クラスで複数回タイトルを獲得した最初のライダーとなった。

ノートンに代わってジレラのライバルとなったのは、レスリー・グラハムの手によって大きく進化を遂げたMVアグスタだった。グラハムはイタリアGPでMVアグスタにとって500ccクラス初となる勝利を挙げ、続く最終戦のスペインでも連勝を飾ったが、この2戦で2位となったマセッティに3ポイント及ばずランキング2位となった。

350ccクラス

350ccクラスでは前年に続いてノートンとジェフ・デュークによる支配が続いた。デュークは開幕から4連勝を飾り、その後の怪我によって後半の3戦に不出場となったにもかかわらず、タイトルを獲得したのである。

残る3戦の勝者も全てノートンのライダーで占められており、アルスターGPで優勝したケン・カバナはグランプリで優勝した最初のオーストラリア人となり、続くイタリアGP勝者のレイ・アムはグランプリで優勝した最初のローデシア人となった。

250ccクラス

エンリコ・ロレンツェッティ

250ccクラスも350ccクラスと同様に前年の覇者であるモト・グッツィによって支配されたシーズンであった。ただし主役となったのは前年チャンピオンのブルーノ・ルフォではなく、イタリア人のエンリコ・ロレンツェッティとイギリス人のファーガス・アンダーソンだった。

アンダーソンが開幕から2連勝で選手権をリードしたが、ロレンツェッティは2戦とも2位に入り、第3戦オランダでシーズン初優勝を飾った。ドイツGPでは地元のルディ・フェルデンハイヤーがDKWにグランプリ初優勝をもたらしたが、これは2ストロークエンジンのマシンによるグランプリ初優勝でもあった。

アルスターGPで2位となったロレンツェッティがポイントを逆転してトップに立ち、最終戦ではヴェルナー・ハースとのタイム差が計測できないほどの接戦を制して優勝、初タイトルを決めた。

125ccクラス

選手権シリーズの開始以来続いていたモンディアルの125ccクラス支配が、このシーズン終わりを迎えた。開幕戦でMVアグスタのセシル・サンドフォードが自身とMVアグスタにとってのグランプリ初勝利を飾ると続くオランダでも優勝、第4戦のアルスターGPで3勝目を挙げて初のイタリア人以外による最小クラスチャンピオンとなった。

ドイツGPではヴェルナー・ハースがNSUに、イタリアGPではエミリオ・メンドーニがモリーニに、それぞれグランプリ初勝利をもたらしている。

グランプリ

Rd.	決勝日	GP	サーキット	125ccクラス優勝	250ccクラス優勝	350ccクラス優勝	500ccクラス優勝	レポート
1	5月18日	スイスGP	ブレムガルテン	No Race	F.アンダーソン	G.デューク	J.ブレット	詳細
2	6月13日	マン島TT	スネーフェル	C.サンドフォード	F.アンダーソン	G.デューク	R.アームストロング	詳細
3	6月28日	ダッチTT	アッセン	C.サンドフォード	E.ロレンツェッティ	G.デューク	U.マセッティ	詳細
4	7月6日	ベルギーGP	スパ	No Race	No Race	G.デューク	U.マセッティ	詳細
5	7月20日	西ドイツGP	ソリチュード	W.ハース	R.フェルデンハイヤー	R.アームストロング	R.アームストロング	詳細
6	8月16日	アルスターGP	ダンドロッド	C.サンドフォード	M.カーン	K.カバナ	C.マッキャンドレス	詳細
7	9月14日	イタリアGP	モンツァ	E.メンドーニ	E.ロレンツェッティ	R.アム	R.グラハム	詳細
8	10月5日	スペインGP	モンジュイック	E.メンドーニ	No Race	No Race	R.グラハム	詳細

最終成績

ポイントシステム

順位	1	2	3	4	5	6
ポイント	8	6	4	3	2	1

• 500ccクラスは上位入賞した5戦分の、125・250・350ccクラスは4戦分のポイントが有効とされた。
• 凡例

500ccクラス順位

順位	ライダー	マシン	SUI	IOM	NED	BEL	GER	ULS	ITA	SPA	ポイント	勝利数
1	ウンベルト・マセッティ	ジレラ	-	-	1	1	-	-	2	2	28	2
2	レスリー・グラハム	MVアグスタ	-	2	-	-	4	-	1	1	25	2
3	レグ・アームストロング	ノートン	-	1	4	-	1	-	6	5	22	2
4	ロッド・コールマン	AJS	5	4	5	5	-	2	-	-	15	0
5	ジャック・ブレット	AJS	1	-	-	4	-	4	-	-	14	1
6	ケン・カバナ	ノートン	-	-	3	-	2	-	-	3	14	0
7	ジェフ・デューク	ノートン	-	-	2	2	-	-	-	-	12	0
8	ネッロ・パガーニ	ジレラ	4	-	6	6	-	-	3	4	12	0
9	クロミー・マッキャンドレス	ノートン	-	6	-	-	-	-	-	-	9	1
		ジレラ	-	-	-	-	-	1	-	-
10	レイ・アム	ノートン	6	3	-	3	-	-	-	-	9	0
11	カルロ・バンディローラ	MVアグスタ	3	-	-	-	-	-	4	-	7	0
12	ビル・ドラン	AJS	2	-	-	-	-	-	-	-	6	0
13	ビル・ロマス	AJS	-	5	-	-	-	-	-	-	6	0
		MVアグスタ	-	-	-	-	-	3	-	-
14	シド・ロートン	ノートン	-	-	-	-	3	-	-	6	5	0
15	アウグステ・ゴフィン	ノートン	-	-	-	-	5	-	-	-	2	0
15	フィル・カーター	ノートン	-	-	-	-	-	5	-	-	2	0
15	ジュゼッペ・コルナゴ	ジレラ	-	-	-	-	-	-	5	-	2	0
18	ハンス・バルティスベルガー	BMW	-	-	-	-	6	-	-	-	1	0
18	ジョン・サーティース	ノートン	-	-	-	-	-	6	-	-	1	0

350ccクラス順位

順位	ライダー	マシン	SUI	IOM	NED	BEL	GER	ULS	ITA	有効ポイント	合計ポイント	勝利数
1	ジェフ・デューク	ノートン	1	1	1	1	-	-	-	32		4
2	レグ・アームストロング	ノートン	3	2	4	3	1	2	-	24	31	1
3	レイ・アム	ノートン	6	-	2	2	-	-	1	21		1
4	ロッド・コールマン	AJS	2	3	3	-	-	3	2	20	24	0
5	ケン・カバナ	ノートン	-	-	5	-	2	1	-	16		1
6	ジャック・ブレット	AJS	4	-	6	4	-	4	4	12	13	0
7	ビル・ロマス	AJS	-	4	-	5	3	-	-	9		0
8	シド・ロートン	AJS	5	5	-	-	4	-	-	7		0
9	ロビン・シェリー	AJS	-	-	-	-	-	-	3	4		0
10	アーニー・リング	AJS	-	-	-	-	6	5	-	3		0
11	エバルト・クルーゲ	DKW	-	-	-	-	5	-	-	2		0
11	アウグステ・ゴフィン	ノートン	-	-	-	-	-	-	5	2		0
13	ジョージ・ブラウン	AJS	-	6	-	-	-	-	-	1		0
13	レスリー・グラハム	ベロセット	-	-	-	6	-	-	-	1		0
13	マイク・オルーク	AJS	-	-	-	-	-	6	-	1		0
13	ローランド・シュネル	AJS	-	-	-	-	-	-	6	1		0

250ccクラス順位

順位	ライダー	マシン	SUI	IOM	NED	GER	ULS	ITA	有効ポイント	合計ポイント	勝利数
1	エンリコ・ロレンツェッティ	モト・グッツィ	2	2	1	-	2	1	28	34	2
2	ファーガス・アンダーソン	モト・グッツィ	1	1	3	-	-	3	24		2
3	レスリー・グラハム	ベロセット	3	4	-	-	3	-	11		0
4	モーリス・カーン	モト・グッツィ	-	5	-	-	1	-	10		1
5	ルディ・フェルデンハイヤー	DKW	-	-	-	1	-	-	8		1
6	ブルーノ・ルフォ	モト・グッツィ	-	6	2	-	-	-	7		0
7	ハインリヒ・トルン＝プリッカー	モト・グッツィ	-	-	-	2	-	-	6		0
7	ヴェルナー・ハース	NSU	-	-	-	-	-	2	6		0
9	アラーノ・モンタナリ	モト・グッツィ	4	-	-	-	-	4	6		0
10	シド・ロートン	モト・グッツィ	-	3	-	-	-	-	4		0
10	ヘルマン・ガブレンツ	ホレックス	-	-	-	3	-	-	4		0
12	アーサー・ウィーラー	モト・グッツィ	-	-	4	6	-	-	4		0
13	エバルト・クルーゲ	DKW	-	-	-	4	-	-	3		0
13	ロナルド・ミード	ベロセット	-	-	-	-	4	-	3		0
15	ゴットヒルフ・ゲーリング	モト・グッツィ	6	-	-	5	-	-	3		0
16	ニーノ・グリエコ	パリラ	5	-	-	-	-	-	2		0
16	ビル・ウェブスター	ベロセット	-	-	5	-	-	-	2		0
16	ベニー・ロッド	ベロセット	-	-	-	-	5	-	2		0
16	ロベルト・コロンボ	NSU	-	-	-	-	-	5	2		0
20	ジブレン・ポスマ	モト・グッツィ	-	-	6	-	-	-	1		0
20	レイ・ペティ	ノートン	-	-	-	-	6	-	1		0
20	ブルーノ・フランシスキ	モト・グッツィ	-	-	-	-	-	6	1		0

125ccクラス順位

順位	ライダー	マシン	IOM	NED	GER	ULS	ITA	SPA	有効ポイント	合計ポイント	勝利数
1	セシル・サンドフォード	MVアグスタ	1	1	3	1	-	3	28	32	3
2	カルロ・ウビアリ	モンディアル	2	2	2	-	2	-	24		0
3	エミリオ・メンドーニ	モト・モリーニ	-	-	-	-	1	1	16		2
4	レスリー・グラハム	MVアグスタ	-	-	-	-	3	2	10		0
5	ルイジ・ジンザーニ	モト・モリーニ	-	3	6	-	4	6	9		0
6	ヴェルナー・ハース	NSU	-	-	1	-	-	-	8		1
7	アンジェロ・コペタ	MVアグスタ	5	5	4	-	-	-	7		0
8	ビル・ロマス	MVアグスタ	-	-	-	2	-	-	6		0
9	グイド・サラ	MVアグスタ	-	4	-	-	5	-	5		0
10	レン・パリー	モンディアル	3	-	-	-	-	-	4		0
10	チャーリー・ソルト	MVアグスタ	-	-	-	3	-	-	4		0
12	クロミー・マッキャンドレス	モンディアル	4	-	-	-	-	-	3		0
12	ロモロ・フェリ	モンディアル	-	-	-	-	-	4	3		0
14	フーベルト・ルッテンベルク	NSU	-	-	5	-	6	-	3		0
15	ヘルマン・パウル・ミューラー	モンディアル	-	-	-	-	-	5	2		0
16	フランク・バーマン	EMC・パッチ	6	-	-	-	-	-	1		0
16	ロー・シモンズ	モンディアル	-	6	-	-	-	-	1		0

参考文献

• ジュリアン・ライダー / マーティン・レインズ『二輪グランプリ60年史』（2010年、スタジオ・タック・クリエイティブ）ISBN 978-4-88393-395-2
• ケビン・キャメロン『THE GRAND PRIX MOTORCYCLE』（2010年、ウィック・ビジュアル・ビューロウ）ISBN 978-4-900843-57-8
• マイケル・スコット『The 500cc World Champion』（2007年、ウィック・ビジュアル・ビューロウ）ISBN 978-4-900843-53-0

外部リンク

• Results & Statistics - The Official MotoGP Website
• Meetings TT 1952 - The official Isle of Man TT website