高速鉄道の方式をめぐる議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 05:27 UTC 版)
「中華人民共和国の高速鉄道」の記事における「高速鉄道の方式をめぐる議論」の解説
中国の高速鉄道路線建設には当初、方式をめぐる議論があった。1998年6月の国務院、科学技術部と工程院の会議において、朱鎔基首相が、計画作成中の京滬高速鉄道でのリニアモーターカー方式採用の実現性を質問した。当時、関係者の間では従来の方式と同じ標準軌の旅客専用新線建設と磁気浮上式のリニアモーターカー路線建設で意見が分かれていた。 上海市政府が上海浦東国際空港と市内中心部とを連絡する約30kmのトランスラピッドについて、ドイツ側とのターンキー(完成品引き渡し方式)契約を結んだ2000年には、リニアモーターカーの実現性が高くなった。2003年に世界初の磁気浮上式高速鉄道である上海トランスラピッドが開通した。最高速度430km/hで約30kmを7分20秒で結んでいて、これは営業中の旅客列車としては世界最速である。 リニアモーターカーは速度ではかなり優位であるが、高いコスト、ドイツ側が中国側への技術提供に懸念していることに加え、絶対的な安全性への疑問もあり、中国全土の高速鉄道網では利用は広がらなかった。上海トランスラピッドへの投資は上海市政府だけで100億人民元と言われており、また一部はドイツ側からの支援があった。トランスラピッドの共同事業体が、中国に製造技術と権利を提供することに消極的なことで、大規模なリニアモーターカーの建設や車両製造のコストは、標準軌の高速鉄道技術と比較してかなり高くなると見込まれた。さらに、計画路線沿線の住民がリニアの電磁波による健康被害を懸念し、反対運動をした。これらの問題点から、計画されていた上海・杭州リニア線の建設は凍結された。より短い、上海虹橋国際空港へのトランスラピッドの延伸も進んでいない。なお、上海地下鉄2号線の延伸により2空港間は結ばれ、上海・杭州間には滬杭旅客専用線が開業した。 上海ではリニアモーターカーが注目されたが、新たに完成した秦瀋旅客専用線では、高速鉄道の試験が盛んに行われた。秦瀋旅客専用線は全線が標準軌、複線電化の全長405kmの路線で、1999年に着工、2003年に開業した。2002年9月にはこの路線で国産のDJF2型「先鋒号」が 292.8 km/h の記録を出した。同年11月にはDJJ2型「中華之星」が321km/hを記録した。秦瀋旅客専用線によって250km/hでの営業運転が可能になり、北京と中国東北部の間の旅客輸送の一翼を担っている。秦瀋旅客専用線の開業によって、在来線と旅客専用線との規格の互換性の利点が明らかになった。 2004年、国務院は鉄輪式高速鉄道建設計画である「中長期鉄道網計画」を決定した。この決定によって方式についての議論は終わり、標準軌の旅客専用線の建設を迅速に推し進める方針が明らかになった。
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