静電気と化学工業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/20 01:31 UTC 版)
異なる素材をくっ付けて引き離すと帯電が起き、一方は正に帯電しもう一方は負に帯電する。カーペットの上を歩いた後に接地した物体に触れた時に受けるショックは、靴とカーペットの摩擦による体への過剰に蓄積した電荷の例である。体に蓄積した電荷は強い静電放電を生じさせる。静電気を感じる実験は楽しいが、一方で燃えやすい物質を扱う工業などでは静電気が爆発性の混合物に引火し、深刻な災害を引き起こすこともある。 同様の帯電現象がパイプラインを流れる電気伝導率の低い流体でも起こることがある。これを流動帯電と呼ぶ。電気伝導率の高い(50 ピコジーメンス毎メートル [pS/m] 以上)流体では電荷が分離するとすぐに再結合し、よって電荷生成は重要ではない。石油化学工業では、50 pS/mは流体から電荷を十分取り除くのに推奨される最低値とされている。 絶縁流体において重要な概念は停滞による緩和時間である。これはRC回路における時間定数 (τ) に類似している。絶縁物質では、物質の静的誘電率を電気伝導率で割った値が緩和時間となる。炭化水素流体では、18を電気伝導率で割った値と近似されることがある。よって電気伝導率が1 pS/cmの流体は約18秒の緩和時間をもつ。流体に蓄えられた過剰な電荷は緩和時間の4、5倍でほぼ完全に放出される。上記の炭化水素の例では90秒程度で放電が完了する。 電荷生成はより早い流体速度やより大きなパイプ直径の場合に増加し、特に20 cm以上のパイプでは著しく大きくなる。こういったシステムでの電荷生成を制御するには、流体の速度制限が最も有効である。イギリス規格の『BS PD CLC/TR 50404:2003 Code of Practice for Control of Undesirable Static Electricity』では速度制限を規定している。水分の含まれる流体では誘電率が著しく大きくなるため、水を含む炭化水素の制限速度の推奨値は1 m/sである。 接合と接地は電荷の蓄積を避ける一般的な手法である。10 pS/m以下の電気伝導率の流体では、結合と接地だけでは電荷放出には不十分であり、更に追加の静電気防止対策が必要となる。 適用規格 BS PD CLC/TR 50404:2003 Code of Practice for Control of Undesirable Static Electricity NFPA 77 (2007) Recommended Practice on Static Electricity API RP 2003 (1998) Protection Against Ignitions Arising Out of Static, Lightning, and Stray Currents
※この「静電気と化学工業」の解説は、「静電気学」の解説の一部です。
「静電気と化学工業」を含む「静電気学」の記事については、「静電気学」の概要を参照ください。
- 静電気と化学工業のページへのリンク