雷雲の発生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 10:18 UTC 版)
地表で大気が暖められることなどにより上昇気流が発生し上空へ昇って行くと、あるところで飽和水蒸気量を超えて水滴(雲粒)が発生する。これが雲であり、湿度が高いほど低層から、気流の規模が大きいほど高空にかけて、発達する。 この水滴は高空にいくほど低温のため、氷の粒子である氷晶になる。氷晶はさらに霰(あられ)となり上昇気流にあおられながら互いに激しくぶつかり合って摩擦されたり砕けたりすることで静電気が蓄積される。成長して重くなる霰は下に、軽い氷晶は上に持ち上げられるが、後述のとおり霰は負、氷晶は正に帯電するため、雲の上層には正の電荷が蓄積され、下層には負の電荷が蓄積される。 雲の中で電位差が生じる原因は、長らく研究者の間で議論されており、異なる切り口からいくつかの説が出されてきた。そのうちのいくつかは現在でも支持されている。そして、これらを全体的観点からまとめた着氷電荷分離理論(高橋, 1978)が最も多くの支持を得ている。 水は固体よりも液体の方が結合解離エネルギーが低いため、水滴中には多くのH+やOH-が生成される。ただし、H+は氷に浸透しやすいため、水滴・氷晶・霰が接触しあう環境では、氷が正、水が負に帯電する。 同じ環境中に氷晶と霰がある場合、霰にはより多くの雲粒が蒸発・昇華(ライミング)するが、その時の潜熱の影響で霰は氷晶よりも温かくなる。溶媒中で起こるイオン結合の繰り返し過程の中で、拡散しやすいH+が低温側へ拡散するため、低温側が正、高温側が負に帯電する。 気温が-10℃ - 0℃位の比較的暖かい環境下では、霰へのライミングに伴う潜熱で霰の表面が溶けて水膜ができる。既述のように、水膜中のイオンのうちH+は氷に浸透しやすいので霰の各部分は正、水膜部分は負に帯電する。この霰に外から氷晶が衝突してくると、氷晶は水膜の一部を取り去って負に帯電し、霰は全体として正に帯電する。 よって、雲水量が少ない(湿度が低い)環境で氷晶と霰が衝突すると、低温の氷晶が正、高温の霰が負に帯電する。雲水量が多い(湿度が高い)環境で氷晶と霰が衝突すると、低温の氷晶が負、高温の霰が正に帯電する。
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