阿闍梨戒
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ここでいう『阿闍梨戒』は三昧耶戒の一つであり、文字通り阿闍梨灌頂の際に授かる、密教を伝授する資格を伴う戒律のことを指す。『大日経』の第二巻・具縁品には、灌頂の導師である阿闍梨は次の「十三種類の徳」を具えていなければならないと説かれている。 菩提心を発し、 妙慧と慈悲とがあり、 諸芸(阿闍梨の五明)を兼ねて統べている。 善巧に般若波羅蜜を実修し、 三乗(声聞乗・大乗・金剛乗の全て)に通達し、 よく真言(マントラ)の実義を理解し、 衆生の心を知り、 諸仏・菩薩を信じ、 伝法灌頂を得ていて、妙に(自ら興味をもって)曼荼羅の図像を理解し、 その性格は、調柔(柔和)にして、我執を離れ、 真言行において善く決定することを得て、 瑜伽(各種の密教ヨーガや瞑想法)を究習して、 勇健(勇猛で健全)な(勝義の)菩提心に安住すること。 『阿闍梨戒』は、日本密教では今は伝承されていないが、現在の中国密教では、段階的に「準阿闍梨灌頂」と「阿闍梨灌頂」とがあり、後者の「阿闍梨灌頂」において授かる。チベット密教では別尊の大法や、『大幻化網タントラ』をはじめとする主要な五タントラの灌頂の際には、「瓶灌頂」等の後に「阿闍梨灌頂」を挟み、その際に授かる戒律である。また、中国密教では別名を『随従阿闍梨戒』ともいい、チベット密教では、これ以前に必ず「四帰依」の『上師戒』の解説や、『師事法五十頌』を授かることになっている。 『阿闍梨戒』 金剛乗(密教)の諸戒律に違反することがあってはならない。 身口意の三業をもって、師僧(ツァエラマ:根本ラマ)に供養せよ。 密教における「法」の伝統を軽視することがあってはならない。 伝法と真言の伝授には、必ず師僧の許可を得ること。 師僧が当地を離れた時は、力の限り道場(寺)を守ること。 伝法に際しては敬虔であり、名利を求めてはならない。 なお、以上の条項に大きく違反した場合には、密教における阿闍梨の資格を失うことにもなる。
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