防災での限界と決壊事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 17:45 UTC 版)
治水機能を持つダムは豪雨や長雨が予測されると、予備放流や事前放流を行って空き容量を増やしておき、降雨が本格化すると放流量を抑えて下流の水害を防ぐ洪水調節を行う必要がある。日本ではダム湖への水の流入が貯水能力を超えそうになると、ダムの損壊を防ぐため放流する「異常洪水時防災操作」を行うが、下流域で死傷者・行方不明者などの被害が出ることもあり、放流判断や告知が不適切であったとの批判が出ることもある。また事前放流するには、利水容量を回復させることが大前提となり、利水容量が回復しなかった場合は利水事業者が機能回復のために実施した措置に対し、ダム管理者が利水事業者と協議し要した費用を負担する、等の基本的事項 が弊害となり事前放流を行わなかったり不十分であったため、緊急放流による被害が大きくなっている、との指摘もある。平成30年7月豪雨では6府県にあるダム8か所で防災操作が行われた が、肱川(愛媛県)で氾濫により9人が死亡したため、検証作業が行われている。 「放流 (ダム)#放流の目的」も参照 また砂防ダムも、大量の水・土砂が強い勢いで流入すれば防ぎ切れなかったり、決壊したりする。 洪水時に限らず、多数の死傷者を伴うダム決壊事故は国内含め世界中で発生しており、その度にダムに対する安全性が問われ技術、運用面の改善が求められている。フランスのマルパッセダム決壊事故(1959年)ではダム本体の安全性のみならずダム両岸の基礎岩盤の安定性が重要視された。アメリカのティートンダム決壊事故(1976年)では岩盤の安定性だけではなく水分の透過性も重要視され、以降ダムの基礎工事が建設においては特に注意を払われた。さらに貯水の際における諸問題として地盤の変化に伴う地すべりや誘発地震の問題も指摘され、1963年のバイオントダム地すべり事故(イタリア)では2000人の死者を出す惨事を招いた。因みに、史上最悪のダム決壊事故はアメリカのペンシルベニア州に建設されたサウスフォークダムで、1889年5月31日に決壊してジョンズタウンを壊滅させ、2200人以上の死者を出した。ギネスブックにも掲載されている。
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