長屋噺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 20:10 UTC 版)
江戸落語の演目には、間口9尺(約2.7メートル)、奥行き2間(約3.6メートル)の裏長屋を舞台とするものが多く、その場合の登場人物は八っつぁん、熊さん、与太郎などである。 熊五郎(熊さん)…江戸っ子の典型として描写される。無類の酒好きで短気、乱暴者だが、面倒見がよく、人情深い人柄で、大工や左官など出職の職人であることが多い。八五郎とは名コンビで知られ「脳天熊にガラっ八」と評される。「芝浜」「文七元結」などの人情噺にも登場し、「子別れ」「藪入り」など子どもとの競演も多い。 八五郎(八っつぁん) …熊さんとは名コンビである。うるさい性格で粗忽者(おっちょこちょい)。「八五郎出世(妾馬)」では、ぶっきらぼうだが妹思いの優しい兄として描写される。「ガラっ八」の「ガラ」とは、江戸弁で「悪意はないが、軽々しくあけすけに喋ること」を意味している。 与太郎…少し頭は足りないが、心優しい愛すべき人物として描かれることが多い。性格は呑気で楽天的、定職を持たずにぶらぶらしていることが多い。「孝行糖」では江戸幕府から褒賞金をもらい、それを元手に飴屋を始める孝行者、「大工調べ」では、棟梁からの信頼の厚い職人として登場する。 大家さん…家主のこと。基本的には長屋の住民たちの相談に乗り、何くれとなく面倒をみてくれる頼もしい存在である。「妾馬」や「芝浜」では親切だが、「らくだ」や「大工調べ」では吝嗇で意地の悪い因業大家が登場するなど、その描かれ方は多様である。 町(横丁)のご隠居…仕事を引退し、悠々自適の身の上で、町内では博識で通っており、八っつあんや熊さんを相手に蘊蓄を傾け、講釈をしたがる傾向がある。長屋の住人は何かわからないことがあると真っ先にご隠居に聴きに行くが、「やかん」「千早振る」など、わからないことについて知ったかぶりすることもある。 長屋のおかみ…職人の女房であることが多く、たいていは亭主同様教養には乏しいが亭主よりは常識人で現実主義者。根本では亭主の腕には信頼を置いている。「子別れ」や「厩火事」では働き者でけなげなおかみさん、「短命」では口では亭主を言い負かし、ろくに働きもしないグータラなおかみさんに描かれる。 金坊…長屋に住む町人の子ども。こまっしゃくれていることが多く、しばしば親をやりこめる。「雛鍔」や「堀の内」「真田小僧」などに登場する。 長屋噺では、貧しいながらも日々の生活を楽しみ、助け合って地に足をつけて生きていた庶民の姿がうかがわれる。
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