鎖や紐
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/09 07:51 UTC 版)
落下に備えた安全策として、鼻眼鏡に鎖や紐を取り付けて掛ける人(参考写真)もおり、1879年にニューヨークの眼鏡商が発行したカタログには鼻眼鏡には標準でケースと絹紐が付属するとあるが、鎖などを付けずに掛ける人々(参考写真)も多かった。鎖などを付けても鼻眼鏡が鼻から外れること自体は防げないが、外れた後に地面まで落下して破損したり紛失したりすることを防ぐことができる。鎖などの他端を固定する手段として、1912年のアメリカン・オプティカル・カンパニーのカタログでは、耳かけ(ear loop)、服に留めるホック(hook)、ヘアピン(hair pin)の3通りを紹介し、指定なき場合の鎖の長さを ヘアピン用で229ミリ(9インチ) ホック用で330ミリ(13インチ) 短いヘアピン用で203ミリ(8インチ) 耳かけ用で102ミリ(4インチ) と記載している。 鎖も紐もヘアピンなどの金具と組み合わされ個装されて販売された他、金具なしの紐のみは個装のみならず、半ダースや1ダースの包装でも販売された。ヘアピンや耳掛け、ホックなどの金具にも様々な意匠のものが用意され、予め組み合わされた商品の他、好みの鎖の太さ・長さと金具を指定して注文することもできた。鎖・紐を環状にしてネックレスのように首からかけている写真も多く見られる。ライト兄弟の妹、キャサリン・ライトの写真では、鎖をいったん耳にひっかけてから髪に留めている。鎖などの他端を固定する手段として、上記の三種の他に、カタログの他のページで「オートマチック・アイグラス・ホルダー」と称する、巻き尺のように鎖を巻き取る仕組みのものも紹介され、装飾の多寡の異なる数種が用意されていた。 1921年に眼科医フランク・G・マーフィーは、顔をより美しく見せるために鼻眼鏡を吊る鎖や紐の長さを加減すべきだと主張した。鎖や紐によって顔に線を描くことでその線の方向に顔が長く見える錯覚が起こるとの理論から、丸顔の人が鼻眼鏡をかける場合、丸顔を目立たなくするために鎖やひもを長くたるませて顔に縦の線を描くべきだとした。馬面の人が鼻眼鏡をかける場合、鎖や紐を耳方向へたるみなく引っ張って顔に横の線を描くことが有効だと考えた。 鼻眼鏡の一般的でなくなった今日でも、似た例として補聴器や人工内耳体外装置の落下防止策として被服や頭髪へ紐で留めることがある。特に耳にかけずにもっぱら体内のインプラントへの磁石の吸着力に頼って装着する型の人工内耳体外装置では、紐で被服や頭髪に留めることが取扱説明書で紹介され、装置もあらかじめ紐の取り付けを考慮している。
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