錬金術に立ちはだかる壁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/24 00:25 UTC 版)
「化学の歴史」の記事における「錬金術に立ちはだかる壁」の解説
新しい化合物についての系統的な命名法がなく、また言葉が難解・秘儀的かつ曖昧で用語の意味が使用者により異なっているなど、現代の立脚点からみると、錬金術には複数の問題点がある。具体的に The Fontana History of Chemistry(Brock、1992年)によれば: 錬金術の言語は十分な経験なく得た情報を秘匿するため秘儀的な聖なる術語を創り出した。この言語は現代のわれわれにはよくわけがわからないが、ジェフリー・チョーサーの『錬金術師の徒弟の話』 (The Canon's Yeoman's Prologue and Tale) (『カンタベリー物語』の一部)やベン・ジョンソンの『錬金術師』 (The Alchemist) の読者ならこれなど笑い飛ばすに値すると解釈できよう。 チョーサーの物語は安価な物質から贋の金を造るなど錬金術のいかがわしい一面をあらわにした。チョーサーのすぐのち、ダンテ・アリギエーリもこの詐欺への関心を行動に移し、著作中で錬金術師全員を地獄へ送り込んでいる。その後1317年にアヴィニョン捕囚の教皇ヨハネス22世は、贋金作りの錬金術師全員をフランスから追放した。また、『金属を増殖』した場合は死罪に処するという法律が、1403年にイングランドで成立した。この他にもいろいろ強硬な手段を講じたものの、錬金術は絶えることがなかった。王侯貴族や特権階級は依然として賢者の石や不老不死の霊薬を自分用に探し求めていた。 また、再現実験のための科学的方法についてはまだ合意がなかった。当然のように多くの錬金術師は潮汐の時刻や月齢など無関係な情報を彼らの手法に取り込んでいた。錬金術の秘儀的性格や難解な用語は、錬金術師が実は半可通であるという事実を隠蔽するのに好適だった。14世紀のはじめには錬金術に危機が訪れた。つまり人々が懐疑的になったのである。実験を他者が再現しうること、かつ結果について何が明らかになり何が不明であるのかを明晰な言語で報告するという科学的方法が必要なのは、誰の目にも明らかとなった。
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