野球界に与えた影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/01 09:12 UTC 版)
「ドジャースの戦法」の記事における「野球界に与えた影響」の解説
本書はチームの新人選手を指導するための教本としてロサンゼルス・ドジャース組織では「バイブル」のように重宝され、1998年シーズン開始前にルパート・マードックによって球団が買収されるまではその影響力を保持していた。ギル・ホッジスは「ドジャース戦法」をニューヨーク・メッツにもたらし、1969年シーズンにチームを「ミラクルメッツ」と呼ばれる奇跡的な優勝に導いた。また、2000年シーズン時点で1981年と1988年シーズンのワールドチャンピオンに輝いた当時のメンバーに限定しても、MLB球団の監督もしくはコーチを務めるドジャース出身者はマイク・ソーシア(アナハイム・エンゼルスの監督)、デイビー・ロープス(ミルウォーキー・ブルワーズの監督)、ビル・ラッセル(ドジャースの元監督、タンパベイ・デビルレイズの三塁コーチ)、ダスティ・ベイカー(サンフランシスコ・ジャイアンツの監督)、リック・デンプシー(ドジャースの三塁コーチ)、アルフレッド・グリフィン(エンゼルスの一塁コーチ)、ミッキー・ハッチャー(エンゼルスのバッティングコーチ)、ロン・レニキー(エンゼルスの三塁コーチ)、ジョン・シェルビー(英語版)(エンゼルスの一塁コーチ)と合わせて9人にのぼり、この時期にアメリカ国内でもMLB各球団首脳にドジャース出身者が増殖中であることは話題となった。その理由として挙げられたのが現代野球の指導法について書かれた本書である。 川上哲治が最初に本書を読んだのはヘッドコーチ時代のことであったが、その時は強い印象は残らなかったという。川上は読売ジャイアンツの監督1年目となった1961年春にチームとドジャースのベロビーチにおける合同キャンプを実現させその事前準備のために本書を再読したが、監督経験から認識を変えて読んだ結果、かつての自分を恥じ入るほどその内容に驚かされ、また納得させられすっかりドジャース戦法の虜になってしまった。すぐさま本書を何十冊と取り寄せ、「必ず読んでくれ」と巨人の選手たちに配った。彼は考え抜いた末に「弱いチーム」を強化するには一人ひとりが強くなる以外に方法はないという結論に至り、何をどのように強化するかという疑問に対する答えをドジャース戦法から導き出したのである。本書を教科書としてブロックサインやヒットエンドランなどの新しい野球がチームに導入された。投手の一塁ベースカバーや投手がモーションを起こすと同時に、一塁手と三塁手が本塁に向かってダッシュする、バント阻止のためのバントシフトを日本で初めて実践したのも川上巨人である。川上の下でヘッドコーチを務めた牧野茂はボロボロになるまで本書を読みふけり、その内容をすっかり丸暗記してしまったほどであった。 当時の正遊撃手だった黒江透修は元々あった攻撃力に投手力を含めた守りの野球であるドジャース戦法をミックスさせたことで、巨人は攻めも守りも優れたチームに変わっていったと語る。また、正三塁手の長嶋茂雄によると本書は「野球の基本を書いた教科書」であるが、彼は川上が読み込んで基本の奥に潜む意味を考え抜き、優れた才能が奇跡的に集まった当時の巨人にドジャースの守り中心の野球を取り入れて巨人流に磨き上げた結果、「V9」に繋がっていったとの見解を示している。
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