逆回転運転
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 05:53 UTC 版)
詳細は「2ストローク機関#リード式吸気弁」および「ガソリン直噴エンジン#欠点」を参照 ディーゼルエンジンのうち、4ストローク機関は吸気系統側に掃気用の補機を持たず、噴射ポンプでシリンダー内に直接燃料を噴射する構造の為、(直噴を除く)ガソリンエンジンと異なり始動時に何らかの方法でクランクシャフトを逆方向に回転させることにより、逆回転運転をさせることができる。例えば、自動車の場合は変速機を前進ギアに入れた状態で車体を後進方向に押したり、坂道で下り方向に空走させたりすると、クランクシャフトは逆回転するため、デコンプを開いておくなど始動の予防措置を講じない限りは逆回転状態でエンジンが押しがけ始動してしまう のである。自動車でこのような状態になると、変速機が前進ギアの際に車体は後退し、後進ギアの際に逆に前進が行われる事になる。これは事故や労働災害を誘発する原因になる一方で、その特性を活用する事で変速機を介することなく逆回転のみによる後退運転が可能となることも意味している。 4ストロークディーゼルで逆回転運転が始まった場合、吸排気弁の機能が逆転する為、排気管から吸気し、エアフィルター側に排気が行われる事になる。また、カムシャフトのバルブタイミングや噴射ポンプの噴射タイミングも適切に反転させたものを使用しなければ十分な出力性能が得られない為、自動車ではあまり実用的とはいえないが、中・小型船舶用機関では古くはMANやスルザー、B&Wなどが前進用と後進用の2系統のカムシャフトを可変バルブ機構で4ストロークディーゼルの逆回転運転による後退航行を実現しており、航空用エンジンではダイムラー・ベンツ DB 602が同様の機構を有していた。しかし、今日では小型船舶ではこのような逆回転運転機構ではなく、油圧または電動の遠隔操作で断続されるクラッチと 後退用ギアボックスを組み込む事で後退航行が行われている。 なお、2ストローク機関では逆回転運転をさせても掃気孔と排気弁または排気孔の機能が逆転せず、掃気ポートタイミングも変化しない為、リードバルブ式ガソリンエンジンでもユニフロー・ディーゼルでも共に逆回転運転は可能であり、ディーゼルエンジン特有の長所とはなっていない。但し、ガソリンエンジンでは逆回転が後退に利用される例は一部のスノーモビル程度に限られているが、ユニフロー・ディーゼルでは大型船舶にて今日でもごく当たり前に後退航行を行う手段として用いられている。
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