近日点通過と崩壊
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/02 18:39 UTC 版)
11月28日、NASAは、アイソン彗星が太陽へ最接近した際に消滅したとみられると発表した。2760度まで達するとされる高温による内部の蒸気圧、太陽の重力による潮汐力で核が崩壊、蒸発したと考えられている。しかし翌日になって、NASAは彗星の一部が生き残っている可能性があると発表した。先の発表後に太陽観測衛星によって撮影された映像に再び映し出されたためである。ただし、その明るさは最接近前に比べると大幅に暗くなっていた。12月2日、NASAは、「単なる破片か彗星核の残りかは不明だが、太陽最接近後に何かが再出現した事は明らかである」としつつ、「現時点では塵しか残っていないと思われる」との見解を発表した。 太陽観測衛星SOHOの画像によると、異変が生じたのは近日点通過直前の11月28日19時(日本時間)ごろだった。この時刻以降アイソン彗星の光度が低下し始め、そのまま29日1時に遮光板(太陽やその周辺をカメラの視界から遮る板で、直射日光を避けながら太陽周辺の空間を有効に観測するためにSOHOのカメラに設けられている)に隠れて観測視野から消えた。近日点を通過し、遮光板の背後から再び表れた時、アイソン彗星は予想より暗いV字型の尾を伴っていた。尾の形態の分析から、アイソン彗星は遮光板から再び現れた時点で、残骸としては存在するがすでに「彗星活動は完全に終了」した状態、すなわちこれ以上新たな塵を放出しない状態になっていたとみられている。 近日点通過直後に見られた暗い尾は、塵の供給源を失い拡散を続けた。その表面輝度は12月5日時点で天の川の最も明るい部分の5分の1に落ち込むと推定されている。これは「天の川がはっきり見える暗い空でもようやく視認できるかどうかの明るさ」であり、肉眼での観測は期待できない状況となった。 NASA Comet ISON Observing Campaign (CIOC)によると、12月1日時点の光度は8.5等であり、12月5日時点での最新の光度はおよそ11等ほどに低下している。 12月20日、NASAは、12月18日に行われたハッブル宇宙望遠鏡による観測でアイソン彗星の残骸を撮影する事ができなかったと発表した。彗星の破片が160m以上の幅ならば観測限界(25等)以上の明るさになる計算であり、アイソン彗星はそれ以下のサイズに分解してしまったと考えられる。
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