質的形質と量的形質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 06:52 UTC 版)
動植物の形質を量的形質と質的形質とに大別する分類がある。 質的形質(離散形質) 形態では、ある/なし、尖っている/丸い、1本/2本/3本など、分子では人間のABO式血液型や米のもち(糯)・うるち(粳)性のように、不連続で質的な違いとして示される形質。少数あるいは単一の遺伝子座の影響を受ける。(例)1遺伝子座のとき遺伝様式 両親のある遺伝子座の遺伝子型をAAとaaとする。雑種第1代 (F1) はAaの1種類。F1どうしの交配による雑種第2代 (F2) は、AA:Aa:aa = 1:2:1に分離。 量的形質(連続形質) 人間の身長や胸囲など身体の各部の大きさのように、連続した実数で示される形質。複数染色体上の多数の遺伝子座の影響を受ける。遺伝だけでなく環境も影響する。 従来の遺伝学では、作用力が小さい多数の遺伝子(微働遺伝子あるいはポリジーン)によって支配されると説明されてきた。近年広まった量的形質遺伝子座 (QTL) の概念を用いると、微働遺伝子はQTLに座乗する遺伝子とも説明できる。 なお、遺伝子レベルでは、量的あるいは質的という区分は、便宜上の区分と言ってもいい。一つの形質が、大きな作用を持つ遺伝子(主働遺伝子)と同時に効果の小さな遺伝子(微働遺伝子)に支配されている場合もある。そのとき、主働遺伝子だけに着目するなら質的な取り扱いができ、微働遺伝子も同時に着目するなら量的な取り扱いをすることになる。 大きな作用を持つ遺伝子がなく、効果の小さい多数の遺伝子のみが関与する場合でも、ある/ないの2値形質や、不連続形質、いくつかの型に分類できるカテゴリー形質となることがある。そのような場合も量的形質としての研究対象となる。例を挙げると、利き手(右利き/左利き)、多因子性疾患の有無(糖尿病、統合失調症など)、ブタが一回の出産で産む子の数、行動特性(数段階に分けた喫煙の頻度など)がある。 一つの形質が質的でも量的でもある例 イネ品種の米のアミロース含量(ご飯の粘り気) 質的形質であるもち・うるち性は、対立遺伝子である2つの遺伝子、優性のうるち遺伝子と劣性のもち遺伝子に支配される形質である。その差は精米の外観や炊いたご飯の粘りとして観察される。この違いは米に含まれる2種類の澱粉の違いであり、もち米の澱粉はほぼアミロペクチン100%であるのに対し、うるち米の澱粉はもち米にはないアミロースも含んでいる。(もち米参照) しかしながら、うるち品種の間でも、米のアミロース含量は15%から25%程度とばらつきがある。その違いには複数の遺伝子座が関与しており、うるち品種のアミロース含量という形質は量的形質といえる。
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