諸科学の序列と社会学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/23 01:05 UTC 版)
『実証精神論』の最後の数章(21~23章)では、再び実証主義の方法論が論じられる。論じられるのは科学の分類と序列である。コントは科学を次の六つの分野に分ける。 ① 数学 ② 天文学 ③ 物理学 ④ 化学 ⑤ 生物学 ⑥ 社会学 これらの六つの科学には、先行する科学が次の科学の基礎となるような論理的順序と、実際にそれぞれの学問の発達期からみた歴史的順序がある。さらに、コントは次のような二つの注目すべきことを述べている。 方法上の統一:実証主義は観察された事実から「法則」を発見しようとするが、これらの科学は「法則」が見えやすいものから、「法則」が見えにくいものまで順に並んでいる。こんなとき、実証主義はレベルのちがうものを想像上の概念をもちいて、無理に統一的な説明を使用とはしない。つまり、実証主義は教義の統一ではなく認識方法の統一をめざすのである。 社会学の意義:序列の最後にある社会学を発展させることこそ,実証主義の究極の目的である。なぜなら,それはこれら諸科学の認識を発展させる人間そのものを研究対象とし、しかも、先行科学である生物学による人間の認識とちがって、社会のなかで相互依存する人間の解明を通じてたんに個人としての人間でなく、「人類」に接近する唯一の科学だけである。 コントの文章は明快で、概して沈着冷静である。ところが、「神」でさえ未開時代の人間がつくりだした認識の手段と割り切るコントが唯一熱っぽくなり、読み手に議論の飛躍を感じさせるのは、かれが「人類」について語るときである。
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