読者との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/31 15:24 UTC 版)
「ビアトリクス・ポター」の記事における「読者との関係」の解説
ポターはイギリスの批評家とはほとんど手紙のやり取りをしたこともなく、アメリカの友人に宛てた手紙では、アメリカと違いイギリスでは児童文学が軽く見られていると書いている。アメリカからファンが来訪すると喜んで迎えたが、詮索好きなイギリス人に対しては敵のように追い払うという評判まであった。『カルアシ・チミーのおはなし』はアメリカの読者を喜ばせるために書かれ、イギリスに存在しないクマやアメリカ灰色リスが登場する。 ポターは筆まめな人物で知人やファンの子どもたちに多くの手紙を書いている。『ピーターラビットのおはなし』は手紙に書いた話から生まれたが、他にもいくつかの作品が手紙でのやりとりから生まれている。ジェーン・モースの『 Beatrix Potter's Americans 』(Horn Book, 1982) や、ジュディ・テイラーの『 Beatrix Potter's Letters 』 (Frederick Warne, 1989) には、そうしたたくさんの手紙が収められている。テイラーが Beatrix Potter's Letters を執筆するにあたって収集した手紙は1,400通あまりであった。これだけの数の手紙が保存されていた理由には、電話のない時代であり、ポターが手紙を書くことを好んだのも一つの理由であるが、受け取った人間が大切に保存するほどポターの手紙が魅力的であったことも大きい。後述するようにポターが子ども嫌いだったかについては議論があるが、さくまゆみこは「子どものことを相当好きでなければここまでは出来ないだろう」と述べている。 ポターには子どもがいないため、子どもが嫌いだったとよく言われていた。当時子どもだった近所に住んでいた女性は、飛んでいったボールを取ろうと石垣をよじ登っていたところ、「おてんば娘!」と叱られた話を紹介している。また別の男性は「特定の子ども、特に女の子しかかわいがらなかった」と述べている。都市部からキャンプにやって来るガールガイドには優しかったようで、こうした違いを伝農浩子は、しつけの良くない村の子には厳しく、ポターと同じ窮屈な環境で育った子には優しかったのではないかと述べている。一方、ヒル・トップ農場を購入してから1年ほど経った頃に執筆された『こねこのトムのおはなし』の献辞は「すべてのいたずら坊主に―特に、わが家のへいの上にとびのるいたずら坊主たちへ」と近所の子どもたちへ捧げられている。この本は、やんちゃな子猫たちとそれを行儀よく振舞わせようとする母ネコが登場し、言う事を聞かない子猫たちのせいで母ネコが恥をかく話である。吉田新一は、ポターは子どもというものは大人の言う事を聞かないものだと分かっており、作中でも母親の振る舞いを諷刺して笑いものにしているのだから、やはりポターは子どもの味方だろうと述べている。伝農も、自分と違い自由に飛び回る子どもたちに、ポターはうらやましく思いながらもどう接していいか分からず、厳しい態度に出てしまったのかもしれないともしている。また、ポターは子どもたちの期待を裏切らないためにウサギを常に飼っていたという。
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