襖の下張り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 03:59 UTC 版)
から紙は、紋様を刷り込んだ襖障子の上張り(表張り)のことで、襖障子には多くの下張りが行われる。下張りの工程は、骨縛り、蓑張り、べた貼り、袋張り(浮張り)、清張りなどの工程があり、種々の和紙を幾重にも丁寧に張り重ねてできあがる。 「骨縛り」は、組子に最初に張り付けるもので、組子骨に糊を付けて、手漉き和紙・茶チリ・桑チリなどの繊維の強い和紙を、障子のように張る。霧吹きをすると和紙の強い繊維が収縮して、組子骨を締め付けてガタがこないようにする重要な役目を担っている。 「打ち付け貼り」は、骨縛り押し貼りともいわれ、骨縛りをより強固にするための重ね張りとともに、骨が透けないようにする透き止めの効果もある。 「蓑張り」は、框に糊付けしずらしながら蓑のように重ねて張る。これを二回~四回繰り返す。これは重要な工程で、組子骨の筋の透け防止と襖建具の裄 をだす。さらに、蓑張りが作り出す空気の層は、断熱保温効果と吸音防音効果も果たしている。 「べた貼り」は、紙の全面に糊をつけて貼り、蓑張りの押さえの役割を持つ。 「袋張り」は、半紙または薄手の手漉き和紙や茶チリなどの紙の周囲だけに、細く糊を付けて袋状に張る。袋状に浮かして張るので「浮け張り」ともいい、奥行きのある風合いを完成させる。 「清貼り」は、紙の全面に薄い糊を付けて貼る。これは上張りの紙の材質や裏と表に材質の異なる表面紙を張るときなどに限って使用する。 これらの幾重にも和紙を張り重ねていく工程は、組子の障子の格子を紙の引きで固定し、木材のひずみを防止するとともに、裄のある(ふくらみのある)風合いをもたせて仕上げるためのものである。骨縛りは引きの強い反故紙を用い、中期工程には湊紙(和泉の湊村で漉かれた漉き返しの紙で、薄墨または鼠色の紙)や茶塵(ちゃちり)紙(楮の黒皮のくずから漉いた紙や、故紙を再生したもので単に塵紙ともいう)を用い、清貼の工程には粘りの強い生漉きの美濃紙・細川紙・石州半紙などが用いられた。 板戸や明かり障子は建具職人によって作られるが、襖は一般に建具とは言わず、「ふすま」と言い、経師や表具師によって、幾重にも紙を張り重ねることによって「ふすま」となって行く。紙質を変え、張りの仕口をかえて、紙を張り重ねていくと、ふすまは丈夫になるとともに、吸音効果や断熱効果そして調湿効果などとともに、ぴんと張りつめたなかにも、ふっくらとした柔らかい味わいで、落ち着いた和風の雰囲気を醸し出す。
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