補筆の経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 16:47 UTC 版)
「交響曲第3番 (エルガー)」の記事における「補筆の経緯」の解説
スケッチは第1楽章の冒頭17小節など、ごく一部は総譜で書かれているものの、ほとんどがショート・スコアという形で、その上どう繋がるのかさえ判断がおぼつかない状態であった。エルガーはリードに「自分以外にこの曲は理解できないだろうから、未完に終わったらスケッチは燃やしてほしい」と伝えた。しかし、その一方で主治医には「もしかしたら後世の人が私の作品を補筆するかもしれない。もしそうなるならぜひとも素晴らしい作品になることを願っています」との発言も残しており、研究者の間でしばしば議論となる。結局リードはスケッチを燃やすことはなく、遺稿は大英図書館に保存された。 補筆に向かい急速に動き出すのは、1993年にBBCがワークショップのためにこの交響曲を演奏可能にしてほしいとペインに依頼したことに始まる。すでに1972年頃から個人的にこの曲を研究していたペインは、ただちにこの依頼を承諾し、比較的資料が多く残されていたスケルツォを補筆完成させる。ペインはこの時点では補筆が可能なのはここまでと考えており、エルガーの遺族も学問的試みを超えて作品を完成させることには反対した。しかし1995年、改めてスケッチを見たペインは、第1楽章のあるスケッチ部分が第1楽章の展開部ではないかと閃き、第1楽章を完成させる。このことに刺激を受けた彼は、全楽章補筆完成への意欲を燃やすようになる。当初はこれに反対した遺族も、2005年にエルガーの著作権が切れるといった理由もあり、徐々に態度を軟化させ、完成を依頼するようになる。補筆は1997年に完成し、アンドルー・デイヴィス指揮、BBC交響楽団によって録音が行われ、翌1998年に発売されたCDは大ヒットした。その後、同演奏者により同年2月15日にロンドンで世界初演された。
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