著者と登場人物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 03:37 UTC 版)
著者は作品中で自身を浄土宗の僧らしき「残寿」と名乗っているが一切不明であり、ただの一僧侶の筆力ではなく、またこれほどの作者が他に作品を残さなかったのも奇異の感がある。本書が浄土宗門の異端ともいえる祐天一派と幕府の企画したプロパガンダ出版だとすると、有力な作家を密かに起用し、彼らとの関わりを秘するために偽名を使用した可能性もある。また祐天自身が作者であろうという見方もあり、多くの信者を集めていた祐天は話術、説法に長けていた雄弁家と見られ、この程度の著作は十分可能だったと考えられる。作者が正体不明でこの一作で終わっていること、作品の記述が浄土宗の説法に沿うこと、語調が読み聞かせに適した文体であることはこの推測に符合する。 作者が全く不明である一方、登場人物の祐天和尚(1637年 - 1718年)は浄土宗大本山の芝増上寺法主として大僧正にまでなった実在する浄土宗の高僧であり、本書はその存命中に出版されたことから、祐天本人か側近の監修を受けていると考えられる。弘経寺住職の檀通上人や利山和尚も実在し、また村人の累、与右衛門、菊、名主の三郎左衛門、年寄の庄右衛門などの名が当時の法蔵寺の過去帳に見えることから、おそらく実在人物の名を取ったものと見られる。作中に見える鬼怒川沿いの地名や、浄土宗檀林の弘経寺をはじめ、累の墓がある法蔵寺、霊仙寺、報恩寺なども常総市に現存する。
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