自然植生の破壊
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:15 UTC 版)
エゾシカによるミヤコザサやクマイザサなどのササ類や草本の採食、オヒョウやハルニレなどの広葉樹に対する樹皮剥ぎ、そして踏みつけによって、北海道の各地で植生が破壊されている。大雪山系 ではヤマグワ、コクワ、ヤマブドウ、ツルウメモドキ、ミヤママタタビなどの果実類も食べられている。知床のシレトコスミレや夕張岳のユウバリソウに代表される高山植物、霧多布湿原のエゾカンゾウや春国岱のハマナスなどの限られた環境に生育する希少な植物も被害を受けている。エゾシカが高密度に生息している森林で台風などによる風倒が発生すると、エゾシカが稚樹を食べてしまい、森林の回復が大きく遅れてしまうといったように、森林更新そのものに影響を与えている事例もある。また、エゾシカの踏みつけや採食により、草地の衰退とともに裸地化が進み、土砂の流出や落石も発生している。 エゾシカ個体群が過剰な密度にまで成長して環境収容力を越えている洞爺湖中島では、ススキ、エゾニュウ、オオイタドリ、ヨブスマソウなどの高茎草本やササ群落が消失し、森林植生は壊滅的打撃を受けている。ここまで植生破壊が深刻化すると、シカが届く高さにある下枝が一様に食いつくされ、ディアライン(deer line:ブラウジングラインともいう)が形成される。こうして食べ尽くされる植物がある一方で、ハイイヌガヤ、フッキソウ、ハンゴンソウ、フタリシズカ、ミミコウモリ、外来種のアメリカオニアザミといったエゾシカが好まない不嗜好性植物だけが繁栄し、北海道の植物群落が大きく改変されてしまっている。 さらにこうした植生構造の変化と関連して、植物と相互的につながりのある昆虫へ影響が拡大する可能性も指摘されており、北海道の生態系全体の問題となっている。
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