自尊心に関するその後の研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 05:21 UTC 版)
「自尊心」の記事における「自尊心に関するその後の研究」の解説
1970年代のアメリカでは前述通り自尊心の研究が栄えていたが、1980年代になるとマシュマロ実験に代表される自己調節(自己コントロール)(英語版)に多くの心理学者が目を向けるようになった。その後の研究で、自己コントロール能力が生む利益が総合的に評価され、「自己調節の失敗こそが、現代における主要な社会病理である」と結論付けられた。この研究では、高い離婚率や家庭内暴力や犯罪、その他の問題の一因となった多くの例が挙げられている。 この研究に刺激され多くの研究がなされ、自己コントロール能力が学生の成績を予測する方法としてIQやSATのスコアよりも優れていることがわかった。加えて、後の研究では職場では自己コントロール能力が高い上司は、部下からも同僚からも好意的に評価されていること、自己コントロール能力が高い人物は感情的にも安定していて、不安やうつ病や偏執病、精神病質傾向、強迫神経症、摂食障害、アルコール依存症その他の問題を抱える傾向が低く、また腹を立てることが少なく、腹を立てた場合にも暴言を吐いたり暴力をふるったりして攻撃的になることが少ないことが明らかになった。 2010年にはニュージーランドで1000人の子供を誕生から32歳まで追跡するという大規模で徹底された調査が発表された。その結果は上記の内容を裏付けるものであった。自己コントロール能力が高かった子供は、成人してからの肥満率が低く、性感染症を持つ者も少なく、歯の状態もよいという身体的に健康な状態であることが明らかになった。また、大人になってからも安定した結婚生活を営み、両親が揃った家庭で子供を育てる傾向があった。一方、自己コントロール能力が低かった子供は、アルコールや薬物の問題を抱えやすく、大人になってから経済的に貧しくなる傾向にあり、子供を1人親家庭で育てる割合が高く、刑務所に入る割合が高かった。この研究の内容は、評価方法は観察、両親・教師・子供本人からの問題点の報告によるもので信頼性の高い尺度であり、知能・社会階級・人種の要素を考慮してもなお、全てに有意の差が見られた。 この様に自己調節(自己コントロール)(英語版)の大きな有用性が示されるにつれて、自尊心に関する研究はかつての勢いを失った。
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