じどう‐がっき〔‐ガクキ〕【自動楽器】
自動楽器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/24 22:30 UTC 版)
楽譜による曲の情報の保存とともに、特定の演奏家の演奏を記録し再生する手段として、シリンダーを使った記譜法が考案された。1757年、アングラメル神父によって作られたもので、イタリア人演奏家によるチェンバロ演奏を、現代で言うカーボン紙のようなものを記録媒体とし、ゆっくりと回るシリンダーに巻きつけた紙に演奏情報が記録される仕組みとなっていた。演奏終了後記録の通りに楔を打ち込み、自動演奏を可能にしたチェンバロにセットすると楔に対応してチェンバロの中の弦が鳴り、演奏を再現するという装置であった。 これにより、ある一定の時間を反復させる動作をあらかじめひとつながりの命令として記録させ、毎回同じように実行するという、一種のマクロのシステムが生まれた。このシリンダー記譜法は自動楽器の開発や、楽譜以外の手段による楽曲の記録方法として当時の作曲家にも注目され、ヨハン・ゼバスティアン・バッハやヘンデルは自動オルガンや自動時計用の作品を作曲している。それまで唯一の楽曲の保存・伝達手段は楽譜に限られており、曲情報の解釈は演奏者の個人にゆだねられることが多かった。シリンダー記譜法と自動楽器専用の作曲により、曲という概念ではなく演奏そのものを記録し再生できるという選択肢が増え、シリンダーに楔を打ちこむ職人の技術が、名演を再現する大きな要素となり、繊細な方向性が求められた。この技術はひとつのシークエンスを再現するというプログラムと形容でき、オートマタの流れるような動作につながっていく。
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