自分の記憶の研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 15:59 UTC 版)
「ヘルマン・エビングハウス」の記事における「自分の記憶の研究」の解説
エビングハウスは、当時の常識では無理と思われていたが、実験によってより高次な精神的過程が実際に研究できることを明快に示した。 記憶実験において、最も混乱をきたす潜在的な斑(むら)を抑えるためには、記憶するのは容易でありつつも、事前に学習認知されない言語リストを用いた復唱が必要となる。そこでエビングハウスは、後に「ナンセンス音節(英語版)(CVCトリグラム(英語版)とも)」と呼ばれるアイテムを使った。ナンセンス音節は、子音-母音-子音という組み合わせで、子音の繰り返しはなく、音節自体に別段の意味もない。意味を持つCAT(すでに単語)やBOL(ボールと聞こえる)などは除外された。意味のある音節を削除したのち、エビングハウスは2300個の音節に行き着いた。ひと通り音節集を作成したところで、彼は箱からランダムに音節をいくつか取り出して、それらをノートに書き留めた。その後、メトロノームの規則的な音に合わせて、同じ抑揚でそれら音節を読み上げて、手順の最後に彼はそれらの音節を(記憶から)想起しようとした。1回の調査にのべ15000回の朗読が必要だった。 研究の後、人間はナンセンス音節にさえも有意義な意味をつけることが決定的となった。ナンセンス音節PED(これは"pedal"の頭文字3文字になる)は、KOJのような音節よりも無意味ではない。 音節同士では連想価(英語版)が異なると言われている。これを認識したエビングハウスは、特定の意味を持つ可能性が低く、より容易な検索のための関連付けも試みられづらいような、音節の列を「ナンセンス」とだけ言及するようになる。 彼の記憶研究にはいくつかの限界があった。最も重要なのは、エビングハウス自身が研究の唯一の主題だったことである。これは他の人々にとって研究の一般化可能性(英語版)を制限した。彼はより厳格に結果を維持管理するため自身の日々のルーチンをも統制しようとしたが、自分以外の参加者を排除するという彼の決定は、内部の妥当性が確かだとしても、研究の外部妥当性を犠牲にしてしまった。付け加えるなら、彼が自らの個人的影響を説明しようとしても、誰であれ研究者が参加者を同時に兼ねている場合は、そこに固有の偏見が内在してしまう。また、エビングハウスの記憶研究は、意味論や手続き記憶や簡易記憶術といった、より複雑な記憶の問題研究には立ち入らなかった。
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