能動的標的化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 16:14 UTC 版)
「標的化ドラッグデリバリー」の記事における「能動的標的化」の解説
薬物を装填したナノ粒子の能動的標的化(英: active targeting)は、受動的標的化の効果を高めて、ナノ粒子を標的部位により特異的にさせる。能動的標的化を実現するには、いくつかの方法がある。体内の病変組織のみを積極的に標的化する一つの方法は、薬物が標的とする細胞上の受容体の性質を知ることである。次に研究者は、ナノ粒子が相補的な受容体を持つ細胞に特異的に結合する細胞特異的リガンドを利用できる。この形式の能動的標的化は、細胞特異的リガンドとしてトランスフェリンを利用したときに成功することが見いだされた。トランスフェリンはナノ粒子に結合して、トランスフェリン受容体を介したエンドサイトーシス機構を膜上に持つ腫瘍細胞を標的とした。この標的化の手段は、非共役ナノ粒子とは対照的に、取り込みを増加させることが判明した。 能動的標的化は、通常、磁気共鳴画像法(MRI)において造影剤として機能するマグネトリポソーム(磁性リポソーム)を利用することによっても達成できる。このように、これらのリポソームに所望の薬物を移植(接ぎ木のように)して身体の領域に送達することによって、磁気位置決めがこのプロセスを促進できる。 さらにナノ粒子には、pH応答性のある材料を利用するなど、標的部位に特異的なトリガー(引き金)によって活性化される能力を持っている可能性がある。体の大部分は一貫した中性のpHを持っている。ただし、体の一部の領域は、他の領域よりも自然な酸性であるため、ナノ粒子が特定のpHに遭遇したときに薬物を放出することにより、この能力を利用できる。もう一つの特別なトリガー機構は、酸化還元電位に基づいている。腫瘍の副作用の一つに低酸素症(英語版)があり、これは腫瘍の近くの酸化還元電位を変化させる。薬物を放出する酸化還元電位を変更することによって、小胞は、異なるタイプの腫瘍に選択的になる。 薬物を充填したナノ粒子は、受動的および能動的な標的化の両方を利用することで、従来の薬物よりも高い利点を持つようになる。それは、細胞特異的リガンド、磁気位置決め、またはpH応答性材料の使用を通じて、標的に首尾よく引き付けられるまで、長時間にわたって体内を循環できることである。これらの利点のために、薬物を充填したナノ粒子が病変組織のみに影響を与える結果、従来の薬物による副作用は大幅に減少する。しかし、ナノ毒性学として知られる新たな分野では、ナノ粒子自体が、それ自体の副作用を伴って環境およびヒトの健康の両方に脅威をもたらす可能性が懸念されている。能動的標的化は、ペプチドをベースとした薬物標的化システムによっても実現可能である。
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