能動空力弾性翼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/08 20:46 UTC 版)
「X-53 (航空機)」の記事における「能動空力弾性翼」の解説
現代の飛行機の主翼は、舵(動翼)を切るなどしても変形しないような剛性を持つよう設計されている。たとえば、ロール(横転)するためには左右翼端後縁のエルロンと呼ばれる動翼を差動させ、左右の翼で生じる空気力の差を回転モーメント(トルク)とするが、主翼自体はほとんど変形しない。 一方、能動空力弾性翼(以下、AAW) はたわみ翼の一種で、主翼自体をある程度変形させることで空気力(差)を生み出そうとするものである。最初の飛行機であるライト・フライヤーや、現代の人力飛行機などではケーブルを引っ張る力により直接翼をたわませるが、AAWの発想は若干異なる。 X-53の場合、まず両主翼端前後縁の小ぶりの動翼を油圧アクチュエータにより動かす。この動翼の面積や作動角度はもともとのF/A-18の前縁フラップやエルロンよりも小さく、単体では十分な空気力を発生できない。しかし、主翼の構造がF/A-18よりも柔軟なものに改修されているため、動翼の空気力により主翼全体の形状をゆがませる(ねじる)ことは可能である。主翼が変形すると、そこに生じる空気力も当然変わり、全体としてはマニューバ(機動)に足るだけの空気力ならびにトルクを得ることができる。 一般に、変形に伴い空気力が変わり、空気力によりさらに変形する、という空力 (aero-) と弾性 (elastic-) の連成が起きると、場合によっては変形が大きくなりすぎて構造が破壊されることもある(フラッターやダイバージェンスと呼ばれる現象。X-29も参照)。したがって飛行機の翼には十分な強度と剛性をもたせ、受動的な空力弾性変形に耐えうるようにするのが普通である。これに対しAAWでは、動翼をデジタル制御することで、能動的 (active) に空力弾性連成 (aeroelastic coupling) を利用して翼 (wings) を変形させている。この方法により、従来のエルロン等の動翼を利用するよりも効率的な飛行を行うことができると考えられている。また、主翼構造の強度を下げられる分、構造重量の軽減も図られる。
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