能力向上用途
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/25 03:45 UTC 版)
かつて、アメリカ空軍はデキストロアンフェタミン(英語版)(アデラル、デキセドリン)をパイロットの刺激薬として使い、go-pills と呼んでいた。作戦後には、パイロットが眠れるようにするため no-go pill と呼ばれる抗不安薬かつ睡眠導入剤(ゾルピデムまたはベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるテマゼパム(英語版)、オキサゼパム(英語版))が与えられていた。近年では、モダフィニルなどアンパキン系薬剤の発展により、デキストロアンフェタミンによる妄想症や不快感を生じさせることなく警戒能力を維持することが可能になった。 アンフェタミンは長距離トラックの運転手、建設業関係の労働者、工場作業員など、労働時間が長かったり不定期になりがちなシフト勤務者や、単調な反復作業を行う者の間でも広く使われている。このためアンフェタミンは時に「レッドネック・ドラッグ」 (redneck drug)と呼ばれる(レッドネックとは「野外で働いていて首筋が赤く日焼けしているような白人労働者」に対する蔑称)。タイでは缶詰工場の労働者に対し生産性を上げる目的で強制的にアンフェタミンを投与した事例が報告されている。 ホワイトカラーもまた、長時間に及ぶ過密なスケジュールの間注意力を持続させるため、あるいは学習能力を向上させるためにアンフェタミンを使うことがある。数学者のエルデシュはアンフェタミンを常用しており、服用を止めた時は研究がはかどらなかったという。また、アメリカの大学生の間で「頭の良くなる薬」として乱用されている事例が報告されている。 戦後、アンフェタミンはスポーツの世界にも広まった。1960年(昭和35年)のローマオリンピックで、アンフェタミンを投与されたデンマークの自転車選手ヌット・エネマルク・イェンセンが競技後に死亡して以降、ドーピング防止策が進められるようになり、1974年(昭和49年)にアンフェタミンは禁止薬物に指定された。2014年現在、世界アンチ・ドーピング機関 (WADA) の「禁止表」において「興奮薬」に分類されている。晩年の力道山も衰えた力を隠すために服用していたことが田鶴浜弘(プロレス記者)の口から語られている(田鶴浜弘は間違えて、「アフェミン」と言っていた)。 1960年代から70年代のイギリスにおいても普及しており、モッズ文化において重要な役割を果たした。後にはパンクスによって夜通し踊り続けるために使われた。ビートルズも、デビュー前にハンブルクのクラブで夜通し演奏するためにアンフェタミンを服用していた。
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