翻訳・通訳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 06:11 UTC 版)
欧州議会において発言者は欧州連合の公用23言語のいずれの言語でも発言することができる。すべての本会議においては同時通訳が提供されており、また法令の最終文書もこの23の言語に翻訳される。23もの言語を扱うことから欧州議会は世界でもっとも多言語を用いる議会であり、また通訳を雇う人数でも世界最大で、常勤で350人、必要に応じてさらに400人のフリーランスの通訳を雇うこともある。また市民は欧州議会に対してバスク語、カタルーニャ語・バレンシア語、ガリシア語で申し入れを行なうことができる。 通常ある言語は外国語から翻訳者の母語に翻訳される。ところが対象となる言語が増えたため1995年からは、一部の小規模の言語で翻訳者の母語から別の言語に訳されるという逆方向の翻訳がなされることもある。さらに通訳がいないために小規模言語でなされた発言が第3の言語を経由して翻訳されるということもある。通訳は自らの母語のほかに2つの欧州連合の公用語に堪能であることが求められる。また通訳は自らの見解にかかわらずに、発言の政治的意味を適切に伝えなければならない。そのためには政治への理解や議会用語を詳しく理解しなければならず、あらかじめ膨大な準備が必要となる。とくに難しいのが、議員が多彩な言語やジョーク、言葉遊びを用いたり、早口で喋るときの通訳である。 母語を話すことがアイデンティティの重要な一部であると考えたり、また議論でまくし立てるように発言したりする議員がいる一方で、翻訳やその経費を批判するものもいる。欧州議会議員アレクサンデル・ストゥブによる2006年の報告書では、欧州連合の公用21言語(当時)に翻訳すると1日あたり118,000ユーロの経費が必要であるが、英語、フランス語、ドイツ語のみにすれば8,900ユーロにまで削減することができると指摘した。多くの議員は広範に使用されていることから英語に統一するということを考えているが、法令上の目的を考えればフランス語のほうがより明確かつ正確であるとして、すべての法律文をフランス語にしようとする動きがある。これらの動きが本会議における翻訳に直接影響するものではないが、法案を議論する場面ではフランス語が用いられることになる。
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