繁殖/越冬海域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 09:23 UTC 版)
過去の捕鯨記録および現在の状況においても、本種が繁殖や出産、子育てを行った海域は一切判明していない。北大西洋と南半球の種類は、冬 - 春期にかけて低緯度の温暖で波の静かな沿岸海域に集まることが知られており、湾や半島、海岸沿い等の地形を好んで利用する。また、自分が育った湾や海域に2 - 3年の一定周期で戻ってくるという習性も確認されている。 しかし本種に限っては、その生息数自体の少なさに加え、近年の沿岸での確認例が非常に稀であり、過去の捕鯨記録や化石上の発見でも冬 - 春期の発見が非常に少なく、沿岸での発見・捕獲自体が少ないこと、それに反して沖合での発見が非常に多い、などから、本種は他の2種よりも沖合性が強かった可能性が示唆されている。回遊経路はおろか、本来は沿岸性が非常に強いはずのセミクジラ科において、本種のみ越冬海域および出産/育児海域が過去の捕獲記録上でも一切判明していない。そのため、本種は他のセミクジラ科の鯨たちと比べて沖合性が強かった、または人間活動の影響で沿岸の個体群が早い段階で壊滅した、沿岸の生息域を放棄した可能性が示唆されている。 米国による冬季の捕獲が複数存在するのは日本海南部、上海および舟山群島から東に伸びる太平洋、台湾海峡、北西ハワイ諸島など。その他、日本沿岸や朝鮮半島、黄海の海洋島や海南島などでも複数の捕獲がある。南西諸島が出産海域として示唆された例もあるが、証明するのに十分な資料は得られていない。 なお、本種の越冬海域のありかを大西洋のセミクジラの生息環境と照らし合わせて予測、作成されたオンラインで閲覧可能なマップデータが存在し、南方アジア(上海から香港やマカオなど広東省一帯、ベトナムのトンキン湾)、北西ハワイ諸島、バハ・カリフォルニア一帯が適正地と判断された。 なお、キタタイセイヨウセミクジラでも陸より63キロメートルもの沖合での出産が確認されたケースも存在するほか、ミナミセミクジラも沖合での捕鯨記録が多数存在することは、現在の太平洋セミクジラが沖合で越冬・出産する可能性を示唆している。また、現在の大西洋と南半球のセミクジラ科でも、出産雌と子供、比較的若い世代、成熟個体の一部以外は沖合を中心に回遊していることが判明している。
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