繁殖・細胞分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 07:57 UTC 版)
古細菌は基本的に細菌と同様、単純な二分裂によって増殖(繁殖)する。出芽により増殖するテルモプロテウス目など一部を除くと、分裂後も殆ど同じクローンが2体できるだけである。胞子や芽胞の形成も確認されていない。最適条件での増殖速度はMethanocaldococcusやPyrococcusで約30分、Methanosaetaなど遅いものだと数日を要する。分裂に伴う細胞膜の切断やDNAの分配は細菌に似ていると言われている。Methanocaldococcus jannaschiiを始めとしたユーリ古細菌のゲノム上にはFtsZ、MinDなどが存在し、細菌と同様、Zリングの収縮で細胞を分裂させると考えられている。一方でクレン古細菌からはFtsZが見つからず、分裂機構は長い間全く不明であった。2008年に真核生物のエンドソーム選別輸送複合体(ESCRT複合体)に相当するタンパク質が細胞分裂に関与するという報告がなされている。タウム古細菌も同様の機構を持ち、アスガルド古細菌ではさらに多くのESCRT複合体関連遺伝子が見つかっている。一方で、テルモプロテウス目のゲノムからは、FtsZもESCRT複合体も見つからず、アクチンに類似するタンパク質を用いた細胞分裂機構を持つと予想されている。 有性生殖は存在しないが、特殊な例として、Haloferax volcaniiにおける細胞間架橋構造の形成がある。細菌の接合はプラスミドを移行させる現象であるが、この例ではプラスミドや細胞質は移行せず、ゲノムDNAのみが移行する点で異なる。スルフォロブス目の例では、UV照射や薬剤暴露によるDNA損傷によって細胞凝集が誘導され、染色体の組み換えが起こる。それ以外のストレスによっては誘導されず、プラスミドも関与しないなどといった点で細菌の接合とは異なる。また、繊毛を失った株は凝集できず、UV照射に対する生存性が低下する。細胞融合性を持つFerroplasma acidarmanusでも激しいゲノム組み換えが見られる。いずれも組み換えはプラスミドでは無くゲノムDNAに制御されている。Sulfolobusではゲノムの交換は種特異的であり、Ferroplasma acidarmanusも進化距離の違いにより組み換え率が急速に低下する。これは古細菌における種の概念を示している可能性がある。
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