統計による実態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 02:03 UTC 版)
労働力調査は、労働者自身による申告を基に集計しているのに対して、毎月勤労統計調査は企業に対して企業に勤めている労働者の労働時間を申告した時間(つまり、労働者に賃金を支払った労働時間)を基に集計しているため、その差を「サービス残業時間(賃金不払い労働時間)」とみなすことが出来る。また、その差の中に残業手当のつかない管理職や裁量労働制の労働者が働いた労働時間も含まれると指摘されているが、その割合は、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎より、サービス残業時間(賃金不払い労働時間)の約4割と推定されているが、残りの約6割がそれらに当たらないサービス残業であることに変わりはない。 賃金不払い労働時間は、以下の表のように推移している。2020年時点でのサービス残業時間(賃金不払い労働時間)は、労働者1人当たり年間302.9時間である。また、これらの表より、時間自体は減少傾向にあるが、労働時間に占める割合は、2000年代は17%前後、2010年代は15%前後と微減しているものの、それ程変わっていない。更には2019年4月に働き方改革が開始されたが、業務効率化が不十分な状態で開始されたため、2019年の労働者1人当たりのサービス残業時間は、「鉱業、採石業等」「運輸業、郵便業」以外は、前年の2018年よりサービス残業を増加させる結果となっている。そのことを指摘するだけでなく、2020年4月から中小企業にも残業規制が開始された為、サービス残業時間が増加する恐れがあることも指摘されている。実際には、2020年は新型コロナウイルス感染症の流行による経済的な影響により時間外労働が前年より減少した一方で、経済的に直接影響を受けた「飲食サービス業等」と「生活関連サービス等」に限ると、時間外労働は前年より増加している。 また、どの業種にもサービス残業(賃金不払い労働時間)が生じているが、特に「教育、学習支援業」と「飲食サービス業等」及び「生活関連サービス等」が多く、年間の時間が350時間を超えており、総労働時間に占める割合も20%以上と高い。 「教育、学習支援業」の場合、教職員の長時間労働が背景にあり、持ち帰り残業も多いことも指摘されている。更には、公立学校の場合、給特法により基本給の4%に当たる教職調整額を賃金として支払えば、何時間でも残業が可能である為、長時間労働やサービス残業が発生しやすいことも指摘されている。「飲食サービス業等」及び「生活関連サービス等」の場合は、人手不足だけでなく、非正規社員の比率が高まりったことによる正社員の業務負担のしわ寄せや休日の取りずらさが背景にある。 労働力調査(非農林業雇用者)と毎月勤労統計調査の労働時間とその差(労働者1人当たり年間賃金不払い労働時間)及び比率(2000年以降)年労働力調査による年間労働時間毎月勤労統計調査による総実労働時間賃金不払い労働時間(労調-勤調)賃金不払い労働時間が占める割合2000 2,247.4 1,852.8 394.6 17.6 2001 2,210.9 1,836.0 374.9 17.0 2002 2,205.6 1,825.2 380.4 17.2 2003 2,200.4 1,827.6 372.8 16.9 2004 2,205.6 1,815.6 390.0 17.7 2005 2,190.0 1,802.4 387.6 17.7 2006 2,184.8 1,810.8 374.0 17.1 2007 2,153.5 1,808.4 345.1 16.0 2008 2,132.6 1,791.6 341.0 16.0 2009 2,106.6 1,732.8 373.8 17.7 2010 2,111.8 1,754.4 357.4 16.9 2011 --- 1,747.2 --- --- 2012 2,101.4 1,765.2 336.2 16.0 2013 2,070.1 1,746.0 324.1 15.7 2014 2,049.2 1,741.2 308.0 15.0 2015 2,049.2 1,734.0 315.2 15.4 2016 2,033.6 1,724.4 309.2 15.2 2017 2,044.0 1,720.8 323.2 15.8 2018 1,997.1 1,706.4 290.7 14.6 2019 1,981.4 1,669.2 312.2 15.8 2020 1,924.1 1,621.2 302.9 15.7 産業別労働者1人当たりの年間賃金不払い労働時間の推移(2007年以降)年調 査 産 業 計鉱業、採石業等建設業製造業電気・ガス業情報通信業運輸業、郵便業卸売業、小売業金融業、保険業不動産・物品賃貸業学術研究等飲食サービス業等生活関連サービス等教育、学習支援業医療、福祉複合サービス事業その他のサービス業2007 345.1 239.9 296.9 263.4 248.7 383.2 297.1 399.7 346.0 213.4 --- 497.9 --- 461.7 273.7 294.2 192.3 2008 341.0 181.0 297.7 268.5 255.1 347.1 284.2 391.7 345.1 170.1 --- 491.8 --- 482.1 280.5 343.4 173.0 2009 373.8 436.2 302.8 304.3 249.1 391.5 298.9 403.2 361.2 230.9 --- 542.2 --- 549.7 292.5 323.8 211.8 2010 357.4 391.3 298.0 272.9 251.1 387.6 283.7 390.0 348.7 189.6 336.5 506.9 352.3 534.9 293.3 281.4 194.6 2011 --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- 2012 336.2 247.9 302.9 254.1 265.9 358.4 292.5 351.1 352.0 213.6 282.5 470.8 300.7 482.0 275.7 304.2 217.0 2013 324.1 328.4 264.4 246.4 245.0 307.0 285.3 331.1 339.8 189.1 262.0 442.6 274.9 480.7 266.8 304.1 213.7 2014 308.0 244.6 242.0 221.2 217.3 273.7 280.1 309.8 316.9 124.2 254.7 450.6 281.3 472.7 250.7 271.2 208.9 2015 315.2 123.5 251.9 231.6 220.1 282.1 294.1 320.2 323.7 147.0 293.5 441.8 278.5 472.2 252.3 268.1 183.7 2016 309.2 216.4 228.3 231.2 222.6 288.1 281.6 298.9 325.4 126.6 291.5 424.9 308.4 494.7 244.3 260.5 160.4 2017 323.2 243.2 236.7 247.7 250.2 319.7 262.8 316.1 368.3 137.0 287.5 450.9 297.2 499.6 247.1 286.2 188.0 2018 290.7 281.7 227.0 208.3 183.6 290.7 291.9 286.4 306.9 120.8 211.3 387.9 287.0 449.8 221.8 224.8 172.4 2019 312.2 167.2 229.0 231.9 213.2 303.1 267.8 295.5 332.5 118.7 227.7 403.1 309.8 469.7 264.3 262.4 191.1 2020 302.9 189.3 210.4 226.5 193.2 220.5 257.2 249.4 293.6 112.6 213.5 414.8 366.3 420.8 255.0 218.2 181.3 産業別労働者1人当たりの年間総労働時間に占める年間賃金不払い労働時間の割合推移(2007年以降)年調査産業 計鉱業、採石業等建設業製造 業電気・ ガス業情報通信業運輸業、郵便業卸売業、小売業金融業、保険業不動産・物品賃貸業学術研究 等飲食サービス業等生活関連サービス等教育、学習支援業医療、福 祉複合サービス事業その他のサービス業2007 16.0 10.4 12.6 11.7 11.6 16.4 12.2 19.2 15.9 10.0 --- 26.8 --- 22.4 14.0 14.0 9.6 2008 16.0 7.9 12.6 12.0 11.9 15.1 11.8 18.9 15.9 8.1 --- 26.9 --- 23.3 14.4 16.1 8.7 2009 17.7 18.2 13.0 14.1 11.7 17.0 12.6 19.6 16.6 11.1 --- 30.0 --- 26.6 15.0 15.2 10.7 2010 16.9 16.6 12.7 12.3 11.7 16.7 11.9 19.0 16.1 9.3 15.1 28.3 17.5 25.9 15.1 13.4 9.9 2011 --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- --- 2012 16.0 10.8 12.8 11.5 12.3 15.3 12.3 17.4 16.1 10.5 12.7 27.0 15.0 23.5 14.3 14.4 11.1 2013 15.7 14.1 11.3 11.2 11.7 13.6 12.1 16.6 15.9 9.4 12.0 26.2 14.1 24.0 14.1 14.7 11.0 2014 15.0 10.7 10.4 10.1 10.5 12.2 11.9 15.8 15.2 6.3 11.9 26.8 14.5 23.7 13.4 13.2 10.8 2015 15.4 5.8 10.9 10.6 10.5 12.6 12.5 16.3 15.4 7.4 13.6 26.3 14.5 23.8 13.4 12.9 9.6 2016 15.2 9.9 10.0 10.6 10.6 13.0 12.1 15.5 15.5 6.5 13.6 25.8 16.2 24.8 13.1 12.6 8.5 2017 15.8 11.1 10.3 11.2 11.8 14.3 11.2 16.3 17.2 7.0 13.4 27.5 15.8 24.6 13.2 13.6 9.8 2018 14.6 12.7 10.0 9.6 8.9 13.4 12.6 15.1 14.8 6.3 10.1 24.6 15.7 22.9 12.1 11.0 9.2 2019 15.8 7.6 10.2 10.8 10.4 14.1 11.8 15.7 16.1 6.3 11.0 25.9 17.1 24.2 14.3 12.9 10.3 2020 15.7 8.5 9.6 11.0 9.5 10.5 11.7 13.8 14.4 6.1 10.6 28.7 21.4 22.4 14.0 11.0 10.1
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