統治者の称号としてのマハーラージャ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/06 03:32 UTC 版)
「マハーラージャ」の記事における「統治者の称号としてのマハーラージャ」の解説
今日のインド、パキスタン、バングラデシュを含むイギリス領インド帝国には、イギリスからの独立直前の1947年の時点で、600以上の藩王国が存在し、それぞれに統治者がいて、統治者がヒンドゥー教徒の場合はラージャ (Raja) ないしタークル (Thakur)、イスラーム教徒の場合はナワーブ (Nawab) と称されており、その他にもさほど一般的ではない様々な称号が用いられていた。 イギリスは、インドの3分の2ほどを直接統治していたが、残りの地域はこうした様々な称号で呼ばれた小君主たちの間接統治に委ね、駐在官 (Resident) などをそれぞれの宮廷に派遣して影響力を行使した。 マハーラージャは、文字通りには「偉大な王」「大王」と訳されるが、単に「王」と理解しても誤りではない。本当の意味で強力で豊かな国を統治し「偉大な」君主と目される王がごく少数はいるとしても、他の藩王国の中には、いくつかの町や村があるだけの小さなものもあった。一方でマハーラージャは、現代インドにおける用法では皇帝を意味することもある言葉である。 マハーラージャという言葉は、イギリスによるインドの植民地化が進行する以前には、さほど一般的な用語ではなかったが、植民地化が進んで以降は、多数のラージャたちをはじめとするヒンドゥー教系の支配者たちが、小さな藩王国を統治しているだけであるにもかかわらず、自らマハーラージャと称するようになり、さらには、第一次世界大戦や第二次世界大戦に従軍した者たちの例のように、君主とは無関係な者が何らかの理由でこう呼ばれることもあった。20世紀に入ってから、新たにマハーラージャを名乗るようになったラージャも、コーチン王国(Kingdom of Cochin:現在のコーチ)のマハーラージャと、カプルターラー (Kapurthala) の伝説的なマハーラージャ・ジャガトジート・シング (Jagatjit Singh) の2例があった。 マハーラージャの変種としては、「マハーラーナー (Maharana)」(ウダイプル)、「マハーラーワル (Maharawal)」(ドゥンガルプル (Dungarpur) / ジャイサルメール)、「マハーラワット (Maharawat)」(プラタープガル (Pratapgarh))、「マハーラーオ (Maharao)」(コーター、ブーンディー (Bundi)、「マハーラーオル (Maharaol)」(デーヴァガド (Devgadh))など、「偉大な」を意味する「マハー」に、「王」を意味するラージャ以外の言葉を付けて「偉大な王」という意味にした同義語がいろいろある。 時間の経過や、異なる地域への伝播などによって、綴り字にも変化がいろいろある。「マフラージ (Mahraj)」、「マラージ (Maraj)」と短縮されることおあるが、広く見られる異綴りは「マハーラージャー ('Maharajah)」、「マハーラージ (Maharaj)」である。 マハーラージャは「偉大な王 (Great King)」を意味する他の多くの表現とは異なり、より強調した表現である「ラージャーディラージャ (Rajadhiraja)」(諸王の王)や「マハーラージャーディラージャ (Maharajadhiraja)」も含め、すぐに称号の価値がインフレーションを起こしてしまい、皇帝の地位を意味する表現とはならなかった(ただし、北インドを支配したクシャーナ朝ではイランのシャーハンシャー相当の称号としてマハーラージャディラージャの称号が使われた)。ヒンドゥー語で皇帝を意味する表現は、サムラート (Samraat)、ないしその変形のサムラージ (Samraj)、サムラージャ (Samraja) だけであり、この称号を用いる地位にまで達したのは古代のマウリヤ朝やグプタ朝など、限られた一部の統治者たちだけであった。イスラーム教で皇帝にあたる表現はパードシャーといい、ムガル帝国ではこの表現が用いられた。
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