給付制限・不正利得の徴収
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 03:15 UTC 版)
「健康保険」の記事における「給付制限・不正利得の徴収」の解説
被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は行われない(絶対的給付制限、第116条)。被扶養者についても同様である(第112条)。ただしこれらの場合であっても、埋葬料(埋葬費)については支給する扱いとなっている。 絶対的給付制限を行うには、行為の遂行中に事故が発生したという関係のみでは不十分で、その行為が事故発生の主たる原因であると考える相当因果関係が両者の間にあることが必要である(昭和35年4月27日保分発3030号)。 自殺未遂の場合は、保険給付は行わないが、精神疾患等に起因する自殺未遂については、「故意」にあたらないとして保険給付は行われる。 被保険者が被扶養者を「自己の故意の犯罪行為」によって負傷させた場合、原則として被扶養者は保険給付の対象とならない。ただし配偶者たる被保険者の暴力により負傷した被扶養者が申し出たときは、被扶養者から外れるまでの間に緊急的に受診した場合は保険給付の対象となる。 被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付はその全部又は一部を行わないことができる(相対的給付制限、第117条)。保険給付を受ける者が正当な理由なく文書その他の物件の提出若しくは提出命令に従わず、又は職員の質問若しくは診断に対し答弁もしくは受診を拒んだときも同様である。 ここでいう「給付事由」とは、「闘争、泥酔又は著しい不行跡」によってその際に生じさせた給付事由をいう。したがって、被保険者であり数日前闘争したことがあるも幸いにしてその当時においては何等の給付事由を生じなかった後に一方がこの怒りを晴らそうとして数日後に不意に危害を加えられたものについては「闘争によって給付事由を生じさせた」場合には該当しない(昭和2年4月27日保理1956号)。 被保険者又は被保険者であった者が、正当な理由なく療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる(一部制限、第119条)。 保険者は、偽りその他不正行為により、保険給付を受け、または受けようとした者に対し、6月以内の期間を定め、その者に支給すべき傷病手当金又は出産手当金の全部または一部を支給しない旨の決定をすることができる。ただし、偽りその他不正行為があった日から1年を経過したときは、当該給付制限を行うことはできない(第120条)。 偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、保険者は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる(第58条1項)。この場合において、事業主が虚偽の報告若しくは証明をし、又は保険医若しくは主治医が、保険者に提出されるべき診断書に虚偽の記載をしたため、その保険給付が行われたものであるときは、保険者は、当該事業主、保険医又は主治医に対し、保険給付を受けた者に連帯して前項の徴収金を納付すべきことを命ずることができる(第58条2項)。 保険者は、保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者が偽りその他不正の行為によって療養の給付等に関する費用の支払を受けたときは、当該保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者に対し、その支払った額につき返還させるほか、その返還させる額の40%を支払わせることができる(第58条3項)。
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