結晶と磁性の研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 09:20 UTC 版)
「ピエール・キュリー」の記事における「結晶と磁性の研究」の解説
1880年、同じくパリ大学鉱物学助手の兄ジャックと共に水晶などの結晶に圧力をかけると電位が発生するという圧電効果(ピエゾ効果)を発見、公表した。翌年の1881年、彼らは逆の現象、すなわち水晶に電界を印加すると微妙に変形するという現象を確認した。今日、この現象を応用した水晶振動子が多くのデジタル回路で使われている。 磁性に関する有名な博士論文の前に、自差係数を計測するための精密なねじりばかりを設計し完成させた。この装置の原理は精密な計測を必要とするその後の研究者に広く使われた。ピエール・キュリーは博士論文のテーマとして強磁性、常磁性、反磁性について研究して常磁性への温度の影響を発見し、いわゆる「キュリーの法則」として定式化した。その式に出てくる物質固有の定数は「キュリー定数」と呼ばれている。また強磁性体が温度を上げるとその性質を失うことを発見した。この業績にちなみ、鉄などの強磁性体がその磁性を失う温度のことを「キュリー温度(キュリー点、Curie Temperature)」という。また、高感度の科学天秤も製作し、これはキュリー天秤と呼ばれる。 ピエールはまた、今では「キュリーの原理」として知られている原理を定式化した。すなわち物理現象において、原因に非対称性がないかぎり、結果にも非対称性は現れないという原理である。例えば、無重力状態で無作為に混ぜた砂には非対称性がない(等方性である)。そこに重力場を導入すると、重力の方向によって非対称性が現れる。すると、砂は重力方向に深くなるほど密度が高くなり、重力場の非対称性を反映した状態となる。 このような成果を挙げながら、ピエールは1883年から就いたパリ市立工業物理化学高等専門大学 (EPCI) の教職で得る薄給のまま研究に没頭する日々を送った。出世に興味を持たず、教育功労勲章も断っていた。ただし外国では既に高い評価を得ており、1893年にはイギリスのウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)が訪問し、科学について話し合っている。
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