細胞の不死化とがん化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 05:20 UTC 版)
細胞がん化には、(1) 増殖能の亢進、(2) 不死化、(3) アポトーシスからの回避、の三段階の変化が生じることが必須であると考えられている。テロメアとテロメラーゼは細胞老化と不死化を制御することによって、がんの発生にも関与していると考えられている。 テロメラーゼによるテロメアの伸長修復は、染色体を維持することで、永続的な細胞分裂、つまり細胞の不死化に重要な役割を担っている。マウスの細胞はテロメラーゼ活性が高いため、細胞周期やDNA損傷を監視して細胞老化に導くp53やRbタンパク質を抑制するだけで、容易に不死化させることができる。またヒトの細胞でも、それらの抑制に加えてテロメラーゼを導入することで不死化させることが可能である。このようにテロメラーゼ活性の亢進などによって、テロメア長が維持されていることが細胞の不死化の必要条件の一つである。 形質転換したヒトのガン細胞の9割近くでテロメラーゼの再活性化が報告されている。このことからテロメラーゼを標的とした抗ガン剤の開発が行われている。臨床応用に向けての基礎研究としては、例えば培養がん細胞に対して、テロメラーゼのアンチセンスRNAや機能阻害型テロメラーゼの導入実験などが行われている。その結果、がん細胞の分裂を抑制できることが報告されており、特に前者は正常細胞に対して影響を示さないため、副作用を軽減できることが期待される。副作用が少ないことはがん細胞のテロメアが正常細胞に比べて短いことと関連している。 一方、多くのがん細胞では染色体が不安定になっていることも知られている。テロメアを欠損すると姉妹染色体の間で融合が起こり、このような染色体は複製の際に倍加する。この機構によって染色体異常が加速され、がん化につながるモデルが提唱されている。
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細胞の不死化とがん化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 14:23 UTC 版)
多細胞生物に感染するウイルスの一部には、感染した細胞を不死化したり、がん化したりするものが存在する。このようなウイルスを腫瘍ウイルスあるいはがんウイルスと呼ぶ。ウイルスが宿主細胞を不死化あるいはがん化させるメカニズムはまちまちであるが、宿主細胞が感染に抵抗して起こす細胞周期停止やアポトーシスに対抗して、細胞周期を進行させたりアポトーシスを抑制したりする遺伝子産物を作る場合(DNAがんウイルス)や、細胞の増殖を活性化する場合、またレトロウイルスでは宿主細胞のゲノムにウイルス遺伝子を組み込む際、がん抑制遺伝子を損傷することで、宿主細胞をがん化することも知られている。
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