細胞の区画化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 15:30 UTC 版)
核膜によって、核はその内容物を制御し、細胞質部分から隔離されている。このことは、核膜の両側でのプロセスの制御に重要である。細胞質でのプロセスの制限の必要がある場合、ほとんどの場合主要な関与因子は核へ除去され、そこで転写因子と相互作用し関連する酵素の生産がダウンレギュレーションされる。この調節メカニズムは、エネルギー産生のためにグルコースを分解する経路である、解糖系でも行われている。ヘキソキナーゼは解糖系の最初のステップを担う酵素であり、グルコースからグルコース-6-リン酸を形成する。グルコース-6-リン酸から合成される分子であるフルクトース-6-リン酸が高濃度で存在すると、調節タンパク質によってヘキソキナーゼは核へ除去され、そこで核のタンパク質と転写抑制複合体を形成して解糖系に関与する遺伝子の発現を低下させる。 遺伝子発現を調節するいくつかの転写因子はDNAから分離され、他のシグナル伝達経路によって活性化されない限りそれらが物理的にDNAにアクセスすることがないようになっている。これによって、不適切な遺伝子発現が防がれている。例えば、ほとんどの炎症反応に関与するNF-κBによって制御される遺伝子の場合、シグナリング分子TNF-αによるシグナル伝達経路が開始され転写が誘導される。TNF-αが細胞膜の受容体に結合するとシグナリングタンパク質は膜へリクルートされ、最終的にNF-κBが活性化される。NF-κBの核局在化シグナルによって核膜孔を通って核へ輸送され、標的遺伝子の転写が促進される。 また、区画化によって、スプライシングされていないmRNAの翻訳が防がれている。真核生物のmRNAはイントロンを含んでおり、機能的なタンパク質への翻訳にはイントロンの除去が必要である。スプライシングは、リボソームがmRNAにアクセスする前に核内で行われる。核がなければ、リボソームは転写されたばかりの (プロセシングされていない) mRNAを翻訳してしまい、欠陥があるか機能しないタンパク質が合成されてしまうと考えられる。
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