第6場 山崎街道
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義太夫「立ち出ずる、鷹は死しても穂は摘まずと、たとえに洩れず入る月や、鉄砲雨のしだらでん、晴れ間をここに松の蔭(かげ)…」 義太夫を伴奏に伴内がソロを踊る。幕が開くと雨の夜の山崎街道。両手に木を持ったダンサーたちが山の木々や街道を表現する。 おかるの父与市兵衛は、勘平が仇討ちに加わる資金とするため、おかるを祇園の「一文字屋」に身売りした。前払いの半金を受け取って夜の山崎街道を帰宅する途中、与市兵衛はかつて塩冶家の家臣であった定九郎に襲われ、命と財布を奪われてしまう。襲撃に成功した定九郎は喜びを歌舞伎における六方の動きで表現する。 一方、猟師として生計を立てていた勘平は鉄砲で猪を狙うが、誤って定九郎を撃ち殺してしまう。勘平は猪ではなく人間が倒れていることに驚くものの、その懐に大金が入った財布があることを発見するとこれを横領してしまう。偶然にも舅の仇を討ち、自分のために与市兵衛が用立てた金を取り返したことを知らないまま、勘平は身を寄せているおかるの生家に帰る。 なお、勘平が登場するシーンでは歌舞伎に使われるものに似せた猪の着ぐるみが登場する。この猪は、江戸時代の川柳で「五段目で 運のいいのは 猪(しし)ばかり」(山崎街道が出てくる歌舞伎の「五段目」では、命を狙われた猪が生き延びて、他の登場人物が全員不幸な結末になることに基づいている)と歌われたものであり、歌舞伎を知っている者には嬉しいベジャールのサービスである。 義太夫「所も名に負う山崎の小百姓与市兵衛が埴生(はにゅう)の住家(すみか)。今は早野勘平が浪々の身の隠れ里。駕籠を舁(か)かせて急ぎ来るは祇園町の一文字屋(いちもんじや)・・・ シーンが切り替わりおかるの家。一文字屋の女将お才が迎えに来ている。帰ってきた勘平はおかるとの別れを悲しむが、お才は残りの金が入った財布を渡し、おかるを駕籠に乗せて祇園に運ばせる。そこに与市兵衛の亡骸が運ばれてくる。一文字屋が置いていった財布と勘平が持っていた財布が同じ柄であったことから、おかるの母おかやは勘平が与市兵衛を殺したものと思い責める。勘平自身も闇の中で殺めた相手が与市兵衛であったと信じ込んでしまい、自責の念に耐え切れずその場で切腹する。 そこに現れた由良之助は死んだ勘平の手をとり、仇討ちの連判状に勘平の血判を連ねさせてやる。由良之助は悲劇を乗り越えて仇討ちの決意を固めていく。ここで由良之助が踊るソロは7分間にもおよぶ長大なものである。
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