第五話 忍び風車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 03:37 UTC 版)
「腕 -駿河城御前試合-」の記事における「第五話 忍び風車」の解説
現将軍・徳川家光の実弟である駿府藩主・忠長には謀反の噂が絶えず、そのために忠長の動向を探るべく諸方から多くの忍びが送り込まれ、駿府に潜入していた。1年前に駿府藩に召抱えられたばかりの津上国之介もその1人であった。しかし、不慣れな土地な上に初めての隠密仕事は、無口で人付き合いの苦手な彼には重荷であった。そんなある日、1人の隠密が発見され、藩士たちにより討ち取られた。何処からの隠密か知らぬその男と、忍び特有の伝言法で会話を交わした津上だったが、奥祐筆の児島宗蔵に気付かれてしまう。児島もまた、何処からかの隠密であった。 隠密の仕事に悩む津上に、児島は接触してきた。隠密の仕事を天職と思い、嘘の情報を流すことで駿府藩を中心に戦乱の世を再び甦らせてみせると嘯く児島。隠密の仕事を楽しむ児島と自分の違いにさらに悩む津上は、ひょんなことから、ふさという名の娘と知り合い、恋に落ちる。その帰り道、暗闇から小柄を投げつけられた津上は、とっさに忍びの技である手裏剣術で反撃してしまう。襲ったのは児島であったが、からかい半分での攻撃で彼は津上の忍びとしての技が侮り難いものであることを知る。 その頃、忍び狩りに従事していた腰元・あいが殺害されたことで、彼女が探っていた者の1人である児島に疑いの目が向けられ、また彼が接触した津上にも隠密の疑いが浮上してきた。確証は無くとも、隠密の疑いがあるなら消してしまえばよい。そう考えた家老・朝倉宣昌は2人に御前試合に出場して真剣で立ち会えと命じた。その真意を見抜いた児島は共に藩を抜けないかと打診するが、津上は隠密を辞めふさと共に駿河藩士として生きることを決意。2人は真剣試合で立ち会うことをその場で決めた。隠密であることを知られぬため、手裏剣術は使えぬ。しかし、剣の勝負では児島の居合いや相手の太刀をも折ってしまう剛剣には勝てない。せめて相討ちに持ち込むべく、津上は刀に細工を施した。 御前試合第五番目・津上国之介対児島宗蔵の試合が始まった。試合前、忍びの伝言法により、隠密として互いの調べた情報を交換し合う2人。傍目には長い沈黙と見えた対峙の後、2人は刀を抜き、打ち合った。しかし、刀身に傷をつけてあった津上の刀はあっさりと折れ、勢いあまった児島は体勢を崩した。その隙に折れた刃先を拾い投げつけるが、児島も振り返りざま激しく斬りつける。胴を深々と斬られた津上と額に刃先が突き刺さった児島。2人は共に倒れ相討ちとなった。試合場を片付けに来た下士が、忍びの伝言法で、2人の会話は確かに聞いたと津上に伝える。津上の死に顔は、先日死んだ隠密同様、笑っていた。 登場人物 津上 国之介(つがみ くにのすけ) 駿府藩に潜入した隠密。駿河藩に新規で召抱えられた馬廻り役で、一刀流の遣い手。手裏剣の遣い手でもあるが、その腕前は隠している。 児島 宗蔵(こじま そうぞう) 駿府藩に潜入した隠密。駿河藩の奥祐筆。居合いの達人で、同時に剛剣の遣い手。 ふさ 御鷹頭・鹿島甚左衛門の娘。津上と恋仲になる。 あい 腰元。家老の命で隠密を探っていたが、児島に殺害される。 原作との相違点 サブタイトルが、「風車十字打ち」から「忍び風車」に変更。 津上が隠密の任務に向かない自分に悩み、児島は隠密の仕事を愉しみながらその領分を越えた行動を取ろうとするなど、両者の性格が変更されている。また津上が何処から派遣された隠密かは明記されていない。 原作では児島が津上を討った後、隠密の疑いありとして射殺されたが、試合は相討ちという形で終わっている。
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