第二論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 05:01 UTC 版)
ロックは国家を基礎付けるために自然状態についての考察から始めている。(なお、本編内でも引用されていることからも分かるように、ロックの「自然状態」観は、神学者リチャード・フッカーの影響を多大に受けており、牧歌的・平和的状態と称した。)ロックの自然状態では、人間は自然法に従った範囲内において完全に自由な状態にあり、原則的に服従関係がない平等な状態である。ここで導入されている自然法の規範によれば人間には所有権が認められている。この所有権の起源は労働に求められ(労働価値説)、全ての人間が持つもの(自然権)である。もし自然法が認識されずにある人物の権利が侵害されれば、当事者は抵抗することが可能(抵抗権)であり、また第三者であっても制裁を加えることが可能である。この状態を戦争状態にあるとする。 しかし自然状態では「確立され、安定した公知の法」「公知の公平な裁判官」「判決を適切に執行する権力」が欠けている。そのため、所有の相互維持という目的のために、自然法の解釈権(立法権)や執行権(司法権・行政権)を理解力ある一部の人びとへ委譲することで安定的な自然法の秩序をもたらすことができる。ただし政治社会を形成するためには対等な権利を持つ人間による相互の同意が不可欠である。こうして政治的な統一体が成立すると議会という統治機関による多数決ですべての構成員を拘束する立法や行政などの権利を有することができる(議院内閣制)。しかし自然法という前提の帰結として政治社会の立法行為は自然法を逸脱することはできない。 立法権は常設の必要がなく、また立法権と執行権が同一人の手にあると利己的に用いられる恐れがあるため、しばしば分離されることがある(権力分立)。また他国との和戦・締盟・交渉を行う権力を別に連合権(federative)とするが、実際には執行権と統合された組織によって実行される。この三権のうち、立法権が最高権であり、他の権力はこれに従属する。 社会の成員となった個々の人間の権力を社会から取り戻すことはできない。しかしながら、政府が人民の共同の利益から外れ権力を乱用するようになれば、政府はその由来と権限を失い解体されたとみなされ、人民は新しい形態の立法権を定めたり、古い形態のまま新しい人間に立法権を与える権利を持つ。これが人民の抵抗権であり、このことで人間の生命や財産の所有は保障される。
※この「第二論」の解説は、「統治二論」の解説の一部です。
「第二論」を含む「統治二論」の記事については、「統治二論」の概要を参照ください。
- 第二論のページへのリンク