種子休眠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 23:12 UTC 版)
植物の種子は、発芽に適した条件下においても発芽しないことがあり、このような現象が種子休眠である。これにより、春に発芽するはずの種子が環境の似た秋に発芽してしまい、冬の間に枯死してしまうといったような現象が防がれている。種子休眠には二つのタイプが存在する。一つは、種皮などによって固く覆われているために、胚発生を進めるために必要となる水や酸素などの供給がされず、結果として発芽できないタイプの休眠である。もう一つは、内的な要因により胚発生が停止し、発芽に至らないタイプである。多くの植物が形成する乾燥種子中の成熟胚は、発生(成長)が停止した休眠状態を保たれている。休眠が解除されない限り種子は発芽しないが、休眠打破の引き金となる要因は植物種によって様々である。例えば、レタスの種子は、発芽に適した水や温度条件の下、光(赤色光)を浴びることで発芽が誘導されることが知られている。また、このような種子休眠には、植物ホルモンであるアブシジン酸とジベレリンが関与していることが知られている。アブシジン酸は種子の成熟と休眠の形成を促進する(発芽を抑制する)働きを持ち、一方のジベレリンは発芽を促進する(休眠を打破する)作用を持つことが知られている。種子発芽に対するこれら二つの植物ホルモンの作用は拮抗的であり、これらホルモン量と感受性のバランスが、種子の休眠と発芽に深く関わっていると考えられている。 乾燥種子は環境の変化などに強く、長期間休眠状態を維持したまま発芽を待つことが可能であるものもある。古い種子が発芽した例としては、千葉市で発見され2000年以上前のものと推定された「大賀ハス」や、中国で発見され約1300年前のものと推定されたハスなどが報告されている。
※この「種子休眠」の解説は、「休眠」の解説の一部です。
「種子休眠」を含む「休眠」の記事については、「休眠」の概要を参照ください。
- 種子休眠のページへのリンク