種子の休眠と発芽
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 16:56 UTC 版)
種子は、内的な要因で発芽が阻害されている状態(休眠状態)では好適な条件下に置いても発芽しないが、休眠が解除された状態では、好適な条件下に置かれると、発芽過程が始まる。呼吸によるエネルギー生産が始まり、種子の中にある幼い植物体が成長を始め、種皮を破って伸び、葉を地上に現す。 多くの植物では、種子の中の植物体は休眠状態にある。ただし、休眠に入る機構、休眠が維持される機構、休眠が打破される機構は複雑であり、解明されていない部分も多い。一般に、発芽過程を開始していない(生命活動を停止している)種子は、長い期間にわたって生き延びられることが知られている。ただし、生き延びられる期間は種によって様々であり、何年も保たないものもあれば、数十年にもわたって発芽力を維持するものもある。長生きで有名なのはハスで、日本では弥生時代の遺跡から発掘された種子が発芽した例があり、「大賀ハス」として知られている*。 (*)長い間地層(日本考古学では「土層」)中に保存されていた数千年前のハスが発芽し、いわゆる古代ハスと呼ばれているものは、ハスの種子そのものを年代測定した例はない。これらは同じ層位や上下の層位の他の物質(土壌有機物や木片など)を測定したものから推定したものである。発芽した種子は現生種子の混入の可能性を排除できず、根拠としての確実さは乏しい。種子を直接測定した例では、今のところ500年程度の寿命があることが分かっている。 種子は、好適な条件下で発芽するが、野生種の場合、種子の集団が一斉に発芽するわけではなく、発芽せずに残るものがあるという。これは、発芽の条件が整っても、成長の過程で条件が悪化すれば枯れるので、全種子が死滅する危険を回避するための適応であると言われる。栽培植物の場合、発芽や収穫の効率を上げるため、休眠性を失い、好適な条件下で一斉に発芽するように品種改良されている。どの様な条件で、休眠が解除され発芽が始まるかは、その種の性質により様々である。
※この「種子の休眠と発芽」の解説は、「種子」の解説の一部です。
「種子の休眠と発芽」を含む「種子」の記事については、「種子」の概要を参照ください。
- 種子の休眠と発芽のページへのリンク