社会的ルールを扱う場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 03:49 UTC 版)
「ウェイソン選択課題」の記事における「社会的ルールを扱う場合」の解説
1983年時点で、ウェイソン選択課題の正答率は課題の提示方法によって大きく上下することを研究者らは明らかにしていたが、どの方法が最も正答率を上げる/下げるのかの理論的な説明はなかった。 1992年に、進化心理学者のレダ・コスミデスとジョン・トゥービーは、社会関係という文脈で課題が提示された時に、被験者は「正しい」反応を返す傾向があることを突き止めた。例えば、「アルコール飲料を飲んでいるならば18歳以上である」という仮説と「『資格が認められる年齢』と『飲み物』が書かれたカード」(例えば、16・25・ビール・コーラ)に対しては、ほとんどの参加者は容易に正しい解答である「16」と「ビール」を選択した。様々な状況で行われた一連の実験で被験者は、“資格を認められない限り正当には得られない利得”にまつわる社会ルールが守られているかチェックするよう求められた場合、一貫して高い正答率を示した。人々は社会的な慣習を通じて社会的交換のルールを学び、そうした馴染みの深いルールの方が、(論理学という)あまり馴染みのないルールより適用しやすいと考えた、というような視点を変えた解釈を実験者たちは排除してきたと、コスミデスとトゥービーは指摘した。 ウェイソン選択課題は、検証を求められるルールが社会的交換(利得 X を得るためには資格 Y を満たしていなければならない)にまつわるもので被験者がそのルールが守られているか監視するような形ならば容易な課題になるが、そうでなければより難しい課題になる、という仮説を実験の形で証明したとコスミデスとトゥービーは述べている。そして、そうした違いが実験によって明らかになるならば、人間の推論は文脈に大きく左右されるメカニズムで成り立っており、それは文脈に依存しない汎用的メカニズムというより、社会的な交流における特定の問題を解決するべく自然選択を通じて進化してきたメカニズムだという、進化心理学者らの主張が裏付けられるとコスミデスとトゥービーは述べている。ウェイソン選択課題について言えば、その推論機能のモジュールは不正行為の検出に特化したモジュールの一つといえる。
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