発電機駆動用定速回転装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 02:46 UTC 版)
「日本の気動車史」の記事における「発電機駆動用定速回転装置」の解説
国鉄特急形気動車での冷暖用を含むサービス電源は、3 - 4両ごとに搭載された大容量ディーゼル発電セットによってまかなわれていた。そのため当該部位には制御盤や大形冷却器が設置され、機器室とせざるを得ないことから客室定員が犠牲となっており、高回転で定速運転される発電用エンジンの騒音も避けられなかった。また、その重量と設置スペースの大きさから、軸重維持のため走行用エンジンが1基のみに限られる、水タンクを搭載できないためトイレを省略する、給電能力の都合から一定の割合で編成に発電セット搭載車を組み込む必要があるなど、組成や運用面でも多くの制約と不合理があった。 これらの短所を補うためには、各車でサービス電源を自給でき、かつ、システム全てが床下に収まるものが必要となる。旧来の客車や気動車にも、一両単位の床下分散電源方式が用いられていたことがあるが、これらは全て小型ディーゼルエンジンによって駆動されるもので、集中制御ができず、床下での排気や騒音の点で既に時代にそぐわないものとなっていた。また、中容量床下分散型の例は、キハ58系急行形気動車の冷房化に際して採用された「3両給電方式」(前述)があるが、上記の欠点に加え、重量と艤装スペースがやや大きく、搭載が1エンジン車に限られる制約があった。 これらの問題を全て解消すべく、当形式では各車に中容量の発電機を分散搭載しつつ、その動力源を走行用エンジンに求める方式が新たに開発された。交流発電機の駆動力を走行用エンジンから得る場合、列車の運転状況によりアイドリングからリミットまで回転数が変化することとなり、一定の周波数を保つことが難しい。そこで、2つの方式で発電機の回転を一定速に保つ機構が考案された。ひとつはJR北海道キハ283系気動車で採用された油圧ポンプと油圧モーターを用いて発電機を駆動するシステム、もうひとつはJR西日本キハ187系気動車・JR西日本キハ126系気動車で採用された湿式多板式スリッピングクラッチ(オメガクラッチ)を用いた定速回転装置(Constant Speed Unit=CSU)を介して発電機を駆動する方式である。前者は油圧を一定圧に保つことにより定速回転を実現し、後者は油圧クラッチの作動圧力をコントロールすることで定速回転を実現した。両者とも動力の伝達はVベルトを廃した歯車とシャフトによるもので保守作業も軽減されている。
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