発見者と発明者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 06:06 UTC 版)
「フェライト系ステンレス鋼」の記事における「発見者と発明者」の解説
ステンレス鋼の組織別の基本3系統として、フェライト系ステンレス鋼の他にマルテンサイト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼がある。これら基本3系統は、1910年代に欧米の研究者たちによって発明された。マルテンサイト系はイギリスのハリー・ブレアリーが、オーステナイト系はドイツのベンノ・シュトラウス(ドイツ語版)とエドゥアルト・マウラー(ドイツ語版)が、それらを発明したとされるのが一般的である。しかしフェライト系ステンレス鋼の場合、発明者を特定の人物や組織に帰するのは難しい。 ハロルド・コブは著書で、フェライト系の最初の発見者としてフランスのレオン・ギレ(フランス語版)の名を挙げている。ギレは、ステンレス鋼基本3系統の「フェライト系」「マルテンサイト系」「オーステナイト系」に属する組成を体系的に初めて研究したとされる人物でもある。ギレは1904年に種々の組成の鉄・クロム合金の研究成果を発表した。この論文の中に現在フェライト系として規格化されている組成が既に示されている。ギレは鉄・クロム合金と鉄・クロム・ニッケル合金について研究を続け、これらの鋼種の金属組織・熱処理・機械的性質の研究の中で、フェライト相を持つグループの鋼種があることを見出している。しかし、ギレはこれら鋼種の耐食性については発見しておらず、特許を取ることもなかった。 あるいは、野原清彦はフェライト系の発明者としてフランスのアルベルト・ポルトバン(ドイツ語版)の名を挙げている。ハロルド・コブもまた、ポルトバンをフェライト系のもう1人の重要な発見者として言及している。ポルトバンは前述のギレの研究を引き継ぎ、クロムの含有量が多いほどエッチングしにくいことを発見している。ただし、彼も耐食性の高い鋼として活用できることまでは言及できなかった。ポルトバンは研究を続け、1911年に低炭素高クロム鋼の研究成果を発表した。この研究で現在のAISI規格のタイプ430(JISではSUS430相当)とほぼ同等な組成であるクロム 17.38 %、炭素 0.12 % の合金について報告しており、さらに熱処理によってはこの鋼種はフェライト相組織となることについて言及している。 あるいは、遅沢浩一郎はアメリカのクリスチャン・ダンチゼンを発明者として挙げている。ハロルド・コブもまた、発明者としてではないが、フェライト系の開発におけるダンチゼンの功績を特筆している。ゼネラル・エレクトリックに勤めていた彼は、1911年から電球リード線用の材料として低炭素高クロム鋼の研究を行っていた。研究で使用された鋼種には、クロムを 14 % から 16 %、炭素を 0.07 % から 0.15 % 含有し、焼入れ硬化性がなく、現在のSUS430に相当するものがあった。この鋼種は別の新合金が開発されたためリード線用としては不要となったが、1914年から蒸気タービンブレードとして活用された。 その他には、遅沢浩一郎は、ダンチゼンの他にアメリカのエルウッド・ヘインズ(英語版)もフェライト系の発明者として挙げている。野原清彦は、ポルトバンの他にマルテンサイト系の発明者として知られるハリー・ブレアリーの名も挙げている。ハロルド・コブは、ダンチゼンと一緒にアメリカのフレデリック・ベケットの功績も挙げている。ここまで名を挙げたもの以外にも、フェライト系に相当すると考えられる低炭素高クロム鋼の研究や特許取得を行った人物や組織は存在していた。以上のように、フェライト系の発明の貢献者には様々な人物の名が挙げられる。
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