発注側の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 16:19 UTC 版)
アウトソーシングは、発注側ではサービスの品質を制御できない。発注側が適切な委託者を選択しなかった場合、以下の問題が生じることがある。理論的にはいずれの場面も委託者側の委託業務内容に関する専門知識の維持と委託者側による受注者側の適切な統制管理でほぼ防ぐことが可能である、とされている。しかし、現実には方法は提示されてもそうした問題を克服するような手段は何一つとして確立されていないのが実情である。 費用対効果(コストパフォーマンス)の悪化 アウトソーシングを活用する企業や公共団体の側で、アウトソーシング委託を受ける企業及びスタッフの専門性を評価する能力や意思を手放して丸投げする形を取った場合に、関連費用の節減ができたつもりが、かえって費用対効果の悪い事態となり、委託する前と比べて(不可視になった部分も含めて)関連費用が増大する状態に追い込まれる場合もある。 製品の品質の低下 特に製造業のそれにいえることであり、かつ上記の事例にも共通するものがあるが、委託内容に見合った適切な価格を提示しなかった場合、受注側は受注価格に対し赤字を出さないようにするためにその委託内容に関する費用を削ろうとする。それは人件費や材料費や安全上必要な手続きの省略などである。例えば、人件費を一定以下に削れば受注者側の労働者の意欲が維持できずに手抜きをする可能性が高まる。結果として製品の品質の低下に直結してしまう。ひいては製品リコールの確率を高めることにつながるため、いざリコールとなった場合は余計に費用がかさむことになる(ただし自動車分野のリコールは部品の共通化でリコール対象の範囲が広まりやすくなっていると言う事情も考慮する必要がある)。 内部統制とセキュリティ さらにアウトソーシングは、内部統制がしっかり確立していない場合は情報管理の脆弱性をはらみやすい。具体的には(特に日本においては偽装請負業者を使用している場合に言えることだが)情報漏洩やスパイ活動の温床となりやすい。「日本年金機構#委託先の外部業者による違反行為」および「防衛秘密の漏洩#その他の事案」も参照 これは請負業者側が身元を確認しないで採用活動をする傾向がある上に、雇用者の待遇を低く抑えることが影響している。詳細は「ベネッセ個人情報流出事件」を参照 生産拠点の確保 アウトソーシングが外部委託である以上、生産拠点の確保もまた発注側にとっては頭の痛い問題である。特に限られたパイの中での競争では、受注先がよりよい取引先と契約したり、倒産して拠点を失った場合、次の委託先を探すまで生産停止という状態に陥り、ひいてはそれが販売機会の喪失による損害をもたらすことも考慮しなければならない。この手の問題は国外企業との取引で数多く存在している。
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