畜産物のヒューマンウォッシュ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 15:10 UTC 版)
「動物福祉」の記事における「畜産物のヒューマンウォッシュ」の解説
動物福祉の普及につれて、米国では動物福祉を謳った肉や乳製品が増加しているが、実際には劣悪な飼育環境であるにも関わらず、動物福祉を主張するパッケージと広告で、消費者の懸念を和らげようとする問題が浮上している。 例えば採卵鶏のバタリーケージ飼育が国内外で問題提起されているが、卵の「平飼い」を謳っている商品であっても、近代の集約畜産では、鶏が屋外へのアクセスができず、自然光の入らない薄暗い鶏舎の中で過密に飼育されていることが多い。米国では、消費者団体が、政府機関である連邦取引委員会(FTC)に対して「人道的に飼育された」畜産物という誤解を招く表示をした会社を調査するよう要請したり、大手食肉加工会社タイソン・フーズや、ベン&ジェリーズ社、コカ・コーラ社が、自社製品に動物福祉の虚偽表示をしたとして訴訟になるなどしている。 諸外国では第三者機関に認証された畜産物に添付できる動物福祉認証ラベルが普及しているが、家畜の飼育改善に取り組むFARM FORWARDは2021年にレポートを発表し、これらの動物福祉認証は、消費者が人道的な肉、卵、乳製品を識別するのに役立っておらず、消費者はだまされていると報告した。なお、FARM FORWARDのチームメンバーのうち三人は、10年以上にわたり、米国最大の独立した動物福祉認証機関であるグローバル・アニマル・パートナーシップ(GAP)(英語版)の役員を務めたあと、「GAPが発足当初から変容し、集約畜産を支持し、家畜福祉を低下させ畜産企業の宣伝目的として使用させている」として、抗議後に辞任している。 2015年以降、グローバル・アニマル・パートナーシップの動物福祉認証を受けた複数の農場で、七面鳥が劣悪な環境、暴力的な手技で飼育されていることが明らかになっている。また、イギリス最大の農場認証スキームであるレッドトラクター(Red Tractor)(英語版)の動物福祉認証を受けた複数の農場においても、2018年以降、覆面調査により日常的な動物虐待が発生していることが、メディアに報じられた。 日本では2016年7月から、一般社団法人 アニマルウェルフェア畜産協会により、「乳牛のアニマルウェルフェア畜産認証基準」が施行されたが、乳牛のつなぎ飼いをしていても認証を取得でき、その乳牛から生産された畜産物にアニマルウェルフェアのロゴを貼ることが可能な基準となっている。 また、2021年には山梨県が畜産物のアニマルウェルフェア認証制度を開始したが、欧米で禁止が進んでいる母豚の妊娠ストールや鶏のケージ飼育、乳牛のつなぎ飼いなどの拘束飼育をしていても認証を取得でき、その家畜から生産された畜産物にアニマルウェルフェアのロゴを貼ることが可能な基準となっている。
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